これは、私が友人たちと一緒に「廃ホテル」に行った時の話です。その廃ホテルは、かつては観光地として栄えていた山間のリゾート地にありましたが、経営難で閉鎖され、今では地元でも「出る」と噂される心霊スポットとなっていました。特に4階の部屋で怪奇現象が頻繁に起こるという噂があり、私たちはその場所を訪れることにしました。
夏のある夜、車でそのホテルへ向かいました。到着した時、廃ホテルは暗闇の中でぼんやりと浮かび上がり、周囲は草木が伸び放題で荒れ果てていました。建物は大きく、外観はまだしっかりしているものの、窓ガラスは割れ、壁はひび割れていて、年月が経過しているのが分かりました。全員が緊張しながらも、懐中電灯を持ってホテルの中に入っていきました。
ロビーに入ると、かつては華やかだったであろうシャンデリアが今では埃まみれで、家具も崩れかけていました。周囲には廃墟特有のひんやりとした空気が漂い、何かがこちらを見ているような気配が感じられました。私たちは一列になってゆっくりと進み、4階の部屋を目指しました。
階段を登るたびに、空気がどんどん重くなっていくのを感じました。ようやく4階にたどり着いた時、廊下は完全に暗く、懐中電灯の光が壁にぼんやりと映し出されていました。全員が緊張しているのが分かりましたが、誰も引き返そうとは言いませんでした。私たちは噂の部屋に向かって歩き始めました。
その部屋に近づくと、突然「キィ…キィ…」という音が聞こえました。まるで古いドアがゆっくりと開いていくような音でした。全員がその場で立ち止まり、息を呑みました。誰かが「風の音じゃない?」と言いましたが、その音は明らかに風とは違う、人の手でドアを開けるような不気味な響きでした。
音が止んだ後、私たちは再び歩き始め、噂の部屋の前に到着しました。ドアは少し開いており、中は真っ暗でした。私は意を決してその部屋に入ろうとしましたが、入った瞬間、背後から強烈な冷気が襲ってきました。まるで誰かが冷たい手で肩を掴んだかのような感覚に襲われ、思わず振り返りました。しかし、誰もいませんでした。
部屋の中に入ると、古い家具が乱雑に置かれ、壁には奇妙な落書きがされていました。部屋の中央には大きな鏡がありましたが、その鏡はひび割れていて、まるでそこから何かが飛び出してきそうな不気味な雰囲気を醸し出していました。全員が部屋の中を慎重に見渡していると、突然、鏡の方から「コン、コン」と何かが鏡を叩く音がしました。
私たちは一斉に鏡を見ましたが、そこには自分たちの姿が映っているだけでした。しかし、その瞬間、鏡の中に「もう一人」の影が映っているのに気づきました。そこには、私たちの後ろに立っているはずのない人影がはっきりと映っていたのです。驚いて振り返ると、誰もいません。再び鏡を見ると、その影は消えていました。
「もう無理だ、出よう!」と誰かが叫び、私たちは全速力で部屋を飛び出しました。廊下を駆け抜け、階段を降り、ロビーにたどり着くと、全員が息を切らしていました。車に乗り込むと、すぐにエンジンをかけ、廃ホテルを後にしました。
帰り道、全員が黙り込み、あの鏡に映っていた影について誰も口にしませんでした。後で調べたところ、その4階の部屋でかつて亡くなった人がいたという噂があり、特に鏡には「その霊」が現れると言われていました。私たちはその場所で何を見たのか、真相は分かりませんが、あの時の恐怖は今でも忘れることができません。
それ以来、私たちは二度と心霊スポットには近づかないことを決めました。あの廃ホテルで体験したことが現実だったのか、それともただの恐怖心が生んだ幻覚だったのかは分かりませんが、あの鏡に映った影は、今でも私たちの間で語り継がれています。
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