これは、ある写真好きの中年男性が体験した話です。彼は休日になるとカメラを持ち、自然の風景や植物を撮影するのを楽しんでいました。特に、近所にある小さな山がお気に入りで、季節ごとに変わる風景をカメラに収めるのが彼の趣味でした。
その日も、彼はいつものようにカメラを肩にかけ、近所の山へと出かけました。秋も深まり、紅葉がピークを迎えていたため、美しい景色を撮ろうと意気込んでいました。山は小さいながらも、木々が生い茂り、ところどころに木漏れ日が差し込んでいて、歩くだけで心が癒される場所でした。
彼は登山道を進みながら、カメラのシャッターを切っていきました。色鮮やかな紅葉や、地面に散り積もる落ち葉、木々の隙間から見える空など、自然が織り成す絶景を次々と撮影していきました。山頂にたどり着く頃には、すでに数十枚の写真を撮っていました。
山頂に着くと、彼はベンチに腰を下ろし、景色を眺めながら持参したお茶を飲んで一息つきました。その後、撮影した写真を確認しようとカメラを覗き込みました。しかし、そこで違和感を覚えたのです。撮影したはずの写真の中に、見覚えのないものがいくつか混じっていたのです。
不審に思い、再度写真を確認すると、確かに自分がシャッターを押した覚えのない写真が何枚かありました。その写真には、暗くぼんやりとした林の中に、何か人影のようなものが写っていました。影は遠くにあり、はっきりとは見えないものの、確かに人のようなシルエットが浮かび上がっていました。
「こんな写真、いつ撮ったんだろう?」と首をかしげましたが、その時は単にカメラが誤作動を起こしたか、シャッターが意図せず切れたのだろうと考え、気にせずに次の写真を確認しました。しかし、その後も不自然な写真が続いていたのです。どの写真にも、人影が少しずつ近づいているように見えました。
心臓がドキリとしました。「これはまずい」と思いつつも、冷静に他の写真を確認してみました。すると、いつもの風景写真の中に、さらに奇妙なものが写り込んでいたのです。木々の間に無数の手が伸びているような、不気味な映像が映っていました。それは決して光の加減や影のせいではなく、明らかに人間の手でした。手の先は暗く、まるで彼に向かって何かを訴えかけるように伸びていました。
彼は恐怖心に駆られ、すぐにその場を離れることにしました。急いで山を下りる途中も、何度か背後に視線を感じ、思わず振り返りましたが、誰もいません。しかし、山を下るたびに、背中に何かが迫ってくるような気配を感じ続けました。
ようやくふもとにたどり着き、彼は家に帰るとすぐにカメラのメモリーカードを取り出してパソコンで写真を確認しました。しかし、驚いたことに、家に着いた時にはあの不気味な写真は一枚も残っていなかったのです。代わりに、そこには普通の風景写真だけが映っていました。
「幻覚だったのか?」と疑いましたが、どうにも納得がいきません。あの時見た人影や手は、決して作り物ではなく、確かにそこに存在していたように感じました。しかし、証拠が何も残っていない以上、誰にも話すことができませんでした。
その後も彼はその山に登り続けましたが、あの時のような不気味な体験は二度と起こりませんでした。あの時の写真は一体何だったのか、なぜ消えてしまったのかは今も謎のままです。
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