都会の片隅に、ある奇妙な噂が広がっていました。「影踏みの夜」と呼ばれるその現象は、深夜に特定の街角で起こると言われています。その場所では、決して自分の影を踏んではならない——もし踏んでしまえば、二度と元の生活には戻れないのだとか。
その噂を聞いた大学生の拓也は、怖いもの見たさで友人の圭太を誘い、深夜の街に繰り出しました。街灯がぽつんと灯る静かな夜道。二人は人気のない細い路地を歩き、ついに噂の場所にたどり着きました。
そこは古びたビルの合間にある狭い十字路で、昼間は何の変哲もない場所です。しかし、夜になると空気が変わるといいます。月明かりが差し込むその場所に立ち、二人は息を呑みました。確かに、何か異様な雰囲気が漂っています。
「本当にこんなとこで何か起こるのかよ?」圭太が半笑いで言いましたが、どこか不安そうです。拓也はその表情を見て、「ビビってんのか?」とからかいました。
「じゃあ、ちょっと試してみようぜ」と拓也が言い、わざと自分の影を踏んでみせました。何も起こらない、そう思ったその瞬間、背筋に冷たい何かが走りました。
突然、影が動き出したのです。それは明らかに自分の動きとは異なる、不自然な動きでした。影は歪み、ゆっくりと形を変えていきます。そして、拓也の影はまるで独立した生き物のように、地面に吸い付くように広がり始めました。
「なんだこれ……」拓也は声を震わせました。圭太も顔を青ざめて後ずさりました。二人の目の前で、拓也の影がぐにゃりと伸び、そして人の形をした何かに変わっていくのです。
それは、無表情な人影のようでしたが、顔は真っ黒で何も見えません。ただ、その目だけが赤く光り、じっと二人を見つめています。その瞬間、圭太が叫び声を上げました。「逃げろ、やばい!」
二人は全力でその場を駆け出しましたが、背後からは足音が聞こえ続けます。振り返らずにはいられない、そう思ったとき、圭太が叫び声を上げて地面に倒れ込みました。振り返った拓也は凍りつきました。圭太の影が彼自身を襲っていたのです。
影が圭太の足元に巻きつき、まるで引きずり込むかのように彼を地面に押さえつけています。圭太は必死にもがきましたが、影はどんどん彼の体を覆い、最後には完全に姿を消してしまいました。
拓也は恐怖で震えながらその場を離れ、何とか自宅に戻りましたが、それ以来、圭太は行方不明のままです。警察も手がかりを見つけられず、まるで彼がこの世から消えたかのようでした。
それからというもの、拓也は夜になると自分の影がじっと彼を見つめているような感覚に悩まされ続けています。影が少しずつ自分の意志を持ち始めている——そんな不安が日に日に強まるのです。
そして、ある晩、拓也は鏡を見て愕然としました。自分の背後に、あの赤い目が映っていたのです。それはもう、ただの影ではありませんでした。
「影踏みの夜」とは、一度その影に触れた者が次の犠牲者を探し続ける呪いだったのです。影は常に誰かを引きずり込み、そしてその人間が次の影に変わる……。
今、あなたの後ろにある影は、本当にただの影でしょうか?
深夜に影があなたを見つめていると感じたら、どうか振り返らないでください。それが「影踏みの夜」の始まりかもしれません——。
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