怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

田舎の実家で体験した恐怖の一夜 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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私は都会で働きながら、年に数回、田舎にある実家に帰省する。両親はすでに他界しており、今では古びた家がぽつんと残るだけだ。広い庭には手入れされていない草木が生い茂り、家自体も築50年以上経っている。その古い実家に一人で泊まるのは、どこか心細さを感じるものだったが、幼い頃の思い出が詰まっている場所でもあり、いつも懐かしさと共に過ごしていた。

そんなある年の夏、私は久しぶりに実家に帰ることにした。仕事で疲れ切っていたこともあり、田舎でのんびり過ごしてリフレッシュしようと考えたのだ。到着すると、家は昔のままで、静けさが心を落ち着かせてくれた。しかし、その夏は、今までにない不気味な出来事が待ち受けていた。

夜、家に着いてまず気付いたのは、妙に湿った空気だった。田舎の古い家特有の湿気だと思い、特に気にせず夕食を済ませた。しかし、夜になると突然、部屋の中で奇妙な気配を感じ始めた。いつもなら心地よい静寂が広がるはずの家の中に、何かが潜んでいるような気がしてならなかった。

その夜、私は昔から使っていた和室で寝ることにした。布団を敷き、電気を消して横になったが、どうも寝付けない。風が吹き抜ける音や、虫の鳴き声が耳に残り、落ち着かないのだ。やがて、ふと家の奥から「ギシ…ギシ…」と、床が軋む音が聞こえてきた。

最初は、古い家だから夜中に軋むのも無理はないと思っていた。しかし、その音はどんどん近づいてくる。まるで、誰かが廊下を歩いているかのように。私は布団の中で固まり、息をひそめた。足音はゆっくりと、一定のリズムで進んでいるようだった。

音が私の寝ている和室の前で止まった瞬間、全身に鳥肌が立った。私は目を閉じたまま、恐怖で動けなかった。やがて、障子越しに何かの気配を感じた。誰かがそこに立っているのだ。しかし、その部屋には私以外に誰もいるはずがない。

耐えられず、私は思い切って目を開けた。すると、暗闇の中、障子に人影がぼんやりと映っていた。背の高い影が、じっと私のいる部屋を見つめているかのようだった。心臓が早鐘を打ち、手足が凍りついたように動かなくなった。影は微動だにせず、ただそこに立ち続けていた。

恐怖が限界に達し、私は布団をかぶって必死に目を閉じた。「気のせいだ、気のせいだ」と自分に言い聞かせるが、鼓動はますます激しくなる。やがて、耳元で「ふぅ…」というかすかな吐息が聞こえた気がした。その瞬間、恐怖で叫び出しそうになったが、何とかこらえた。

しばらくして、足音は再び遠ざかっていった。気配が消え、再び静寂が戻ってきたが、私は恐怖で一睡もできなかった。夜が明けるまで、布団の中でただ震えて過ごした。

翌朝、恐る恐る部屋を確認したが、当然そこには誰もいない。私が見た影は、何だったのか? 昔からこの家に何かが住み着いていたのだろうか? 私はすぐに荷物をまとめ、早々に実家を後にした。

実家に帰るたび、子供の頃には感じなかった不気味さが増しているように思う。あの夜見た影は幻覚だったのか、それとも本当に「何か」がいたのか、今でもわからない。ただ、次に実家に帰るときは、一人で泊まることは二度とないだろうと固く決めている。

田舎の静寂には、都会では感じることのできない安らぎがある。しかし、同時にそこには、長い年月の中で積み重なった何かが潜んでいるのかもしれない。特に古い家には、誰も知らない「住人」がいることもある——そう思うと、どんなに愛着がある場所でも、もう一人で帰るのはためらってしまうのだ。

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