その夜、突然の電話の音が響いた。深夜0時を過ぎた頃だ。眠気を振り払いつつスマートフォンを手に取ると、見知らぬ番号が表示されていた。無言のまま通話を受けたが、聞こえてきたのはノイズ混じりの声だった。
「○○さん…ですか?」
私の名前を呼ぶその声は低く、どこか不安定な響きがあった。不審に思い、即座に通話を切った。間違い電話だろう、そう自分に言い聞かせた。
翌日、日中の業務を終え、自宅でリラックスしていると、再び同じ番号からの着信があった。躊躇しつつも応答すると、再びあの声が聞こえた。
「あなたは、今日この後でコンビニに行くつもりですね。」
突然の指摘に驚いた。確かに私は、今晩近くのコンビニへ行くつもりだった。しかし、それを他人が知るはずがない。気味悪さを感じながらも、無視して電話を切った。
だが、その夜、再び同じ番号からの着信が続いた。電話に出ると、今度は具体的な指示が伝えられた。
「コンビニへ行くとき、青いジャケットを着てください。」
不気味さを感じつつ、私はその声を無視して普段通りに出かけた。だが、コンビニへ向かう途中、突然目の前を横切る車が現れ、危うく事故に巻き込まれそうになった。その瞬間、青いジャケットのことが頭をよぎった。もし、あの指示に従っていたら、事故を避けられたのだろうか――。
その後も、毎晩同じ番号から電話がかかってくる。次第にその声は、私が次に取る行動や決断を「予言」するようになった。そして、その内容は的中し続ける。あるときは、「明日は同僚に頼まれることを断ってください」と指示があった。実際、次の日に同僚から無理な頼みを受けたが、電話の言葉を思い出し、断るとその後の仕事が順調に進んだ。
奇妙な出来事が続き、私は次第にその電話の指示に従うようになった。不気味さと共に、彼らの「予言」に依存するようになっていく自分がいた。
ある晩、再び電話が鳴った。今度はいつもよりもクリアな声が響いた。
「私は、あなたです。」
驚愕した。意味が分からず、私は無言で電話を握りしめた。
「正確には、あなたの未来の姿だ。私は、今のあなたが選ぶべき正しい道を示している。あなたがこれまで進んできた道を、より良く導くために。」
未来の自分が、今の自分に電話をしている?理解できないまま、私は問いかけた。
「どうしてそんなことができるんだ?そして、どうしてわざわざ未来から私に指示を?」
電話の向こうの「自分」は冷静に答えた。
「未来は無限に広がる可能性の連続だ。この道を選べば成功、この道を選べば失敗。無数の岐路がある中で、私はより良い未来を選ぶために、あなたを導いている。もし、正しい選択をすれば、あなたは大きな後悔を避けることができる。」
私は言葉を失った。それが本当に未来の自分であるならば、なぜ今の自分にこんなことをしているのか、疑問と不安が入り交じった。
その夜、再び電話が鳴った。今度の指示は、より具体的だった。
「明日の会議で、上司に反対意見を言ってください。躊躇しないことが重要です。」
会議の場面が思い浮かび、私は恐怖に包まれた。反対意見を述べることはリスクがある。だが、これまでの指示がすべて的中していたことを考えると、無視することができない。
翌日、私は緊張しながらも電話の指示通りに行動した。結果、上司の意向に反した提案は採用されなかったが、私の意見が評価され、別のプロジェクトを任されることになった。その後、仕事は順調に進み、昇進への道が開かれた。
だが、その晩の電話はこれまでと違っていた。
「あなたは、もう私に依存しすぎている。この先は自分で選択しなければならない。」
それが最後の電話だった。それ以来、電話は一切かかってこない。まるで、私が試されていたかのようだった。未来の自分に頼ることなく、これからは自分の意思で人生を選び取っていかねばならないというメッセージだったのだろうか。
私は再び自分の選択で日々を過ごしている。しかし、頭の片隅にはいつも「あの声」が残り続けている。果たして、私は本当に正しい選択を続けられるのだろうか。未来の自分はもう助けてくれない。だが、その不安を乗り越え、今を生きるしかないのだ。
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