ある日、仕事の帰り道、ふとスマートフォンに目をやると、見知らぬ番号からの不在着信が残っていた。番号には覚えがなく、特に心当たりもなかったので、気にせずそのままにしておいた。翌日も同じ番号から着信があり、さらに次の日も同じことが繰り返された。
最初はただの間違い電話だろうと考え、無視していた。しかし、着信が続くにつれ、次第にその番号が気になり始めた。毎日、決まった時間帯にかかってくるその電話は、まるでこちらの生活リズムを把握しているかのようだった。少し不気味に感じながらも、日々の忙しさの中で、特に深く考えることはなかった。
しかし、一週間が経つ頃、着信の頻度が増え始めた。昼間はもちろん、夜中にまでかかってくるようになった。夜中の2時や3時といった時間帯に、スマートフォンが突然鳴り響くのだ。気味が悪いので、着信音をオフにして寝るようにしたが、それでも通知が溜まっていくのを見て、次第に不安が募っていった。
ある夜、どうしてもその着信が気になり、とうとう電話に出る決心をした。真夜中、またしてもスマートフォンが震えた。表示されたのは例の見知らぬ番号。胸がざわつき、手が汗ばむ。何か危険な気配を感じながらも、恐る恐る通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
返事はなかった。ただ、静寂が続くだけだ。耳を澄ませても、相手からは何も聞こえない。不気味な沈黙が流れる中、私は再度声をかけた。
「誰ですか?何かご用ですか?」
それでも返事はなく、ただ微かに呼吸音のようなものが聞こえてきた。まるで相手がこちらの様子を伺っているかのような、落ち着いた呼吸音だ。私は背筋に冷たいものが走り、急いで電話を切った。
その夜、なかなか眠りにつくことができなかった。不気味な電話の相手は誰なのか? なぜ無言のまま呼吸音だけが聞こえたのか? 考えれば考えるほど、恐怖が増していった。
翌日、職場でもそのことが気になり、仕事に集中できなかった。昼休み、友人に相談してみると、「ただのいたずら電話じゃないの?」と軽く流された。しかし、どうしても気になった私は、その番号をインターネットで調べてみた。
検索結果には特に何も出てこなかったが、同じ番号からの着信に関する掲示板の投稿がいくつか見つかった。そこには「何度も着信があって怖い」「無言のまま呼吸音だけが聞こえる」という書き込みがあり、他にも同じ体験をしている人がいることがわかった。
その日から、私はますます電話が鳴るたびに恐怖を感じるようになった。相手は何が目的なのか? 無視し続けることで何か良くないことが起きるのではないか——そんな考えが頭を巡る。
数日後、再び夜中に例の番号から着信があった。もう限界だと思い、意を決して電話に出た。
「誰なんですか! いい加減にしてください!」
今度も返事はなかった。ただ、前回と同じく静かに呼吸をする音が聞こえるだけだ。しかし、今回は何かが違った。その呼吸音が、次第に不自然に変わっていったのだ。まるで、何かを抑えきれないように荒くなり、息が詰まるような音に変わっていった。
その瞬間、私は理解した。相手はただの人間ではない——何かもっと得体の知れない存在が電話の向こうにいるのだと。私はパニックに陥り、急いで通話を切り、スマートフォンの電源をオフにした。
その夜、眠りにつけるわけもなく、私は布団の中で震えながら朝を待った。外はまだ暗く、静寂が支配していた。しかし、その静けさの中で、部屋の中に微かな音が響いていることに気づいた。
「……プルル…プルル…」
信じられないことに、スマートフォンの電源を切ったはずなのに、どこかから着信音が鳴っているのだ。私は心臓が凍りつくような感覚を覚え、音の出所を探し始めた。音は明らかに部屋の中から聞こえている。辺りを見回しても何もないが、着信音は途切れることなく続いていた。
恐怖に耐えられなくなり、私は部屋を飛び出し、玄関のドアを勢いよく開けた。外は真夜中の静寂が広がり、誰もいない。それでも着信音は耳の中で鳴り響き続けていた。もう、何が現実で何が錯覚なのかわからなくなり、私はその場に座り込んでしまった。
翌朝、気がつくと玄関前で倒れていた。恐る恐る部屋に戻り、スマートフォンを確認すると、昨夜の着信履歴には例の番号が残されていた。しかし、それ以降は着信が一切止まっていた。
何が起きたのか、今でも説明がつかない。ただ一つ確かなのは、あの電話の向こうにいた存在は、ただの人間ではなかったということだ。あの呼吸音が今も頭の中で響いている。そして、もし再び同じ番号から電話がかかってきたらと思うと恐怖が止まらない。
何かが、今もこちらを見張っているような気配を感じるのだ。
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