その噂を耳にした者には、ある夜に「訪問者」が現れる――。
主人公の木村翔太は、ある日クラスメイトから不気味な噂を聞かされる。夜中に家の外から足音が聞こえてくるというのだ。その足音は、ゆっくりと家に近づき、玄関の前で止まる。そして次の日、その家には何かが置かれているという。その噂を聞いた者は、必ず一度はその「訪問者」に遭遇するらしい。
翔太は「くだらない」と笑い飛ばしていたが、心のどこかで不安を感じていた。
目次
噂の始まり
それは、クラスメイトの一人が語り始めた。彼は顔色を変え、震える声で話す。
「聞いてくれ。昨夜、俺の家に誰かが来たんだ。深夜、寝てたら家の外から足音が聞こえてきて、段々近づいてくるんだよ。それが玄関の前でピタッと止まった。俺、怖くて布団から出られなくて…。次の日の朝、玄関に何かが置かれてたんだ。小さな古い木製の人形がさ…。その噂、マジで本当だった。」
この話はたちまち広まり、他の生徒たちも恐怖に駆られた。噂を聞いた者は、一度だけその足音を体験し、翌朝に必ず「何か」が残されるという。そして、それを目にした人は二度とその現象を体験しない。ただし、その「何か」が何を意味するのか、誰も知らない。
噂を聞いた翔太
噂を聞いた翌日から、翔太は夜が来るのが不安になっていた。彼はオカルトには興味がなかったが、その話には何か現実味を感じたからだ。だが、友達に強がって見せるため、「怖がるなんてバカらしい」と自分に言い聞かせていた。
しかし、その夜、翔太はいつもより遅くまで起きていた。深夜2時を過ぎた頃、ふと家の外が静かになった気がした。そして、不意に聞こえた。
足音だ。
最初は遠くから、そして少しずつ家に近づいてくる。カツン、カツン、と一定のリズムで地面を叩くような音。それはまるで、家の外を一歩一歩、確実にこちらに向かってきているかのようだった。
翔太はベッドで硬直し、音が玄関前で止まる瞬間を待った。心臓の音が耳に響き、全身が冷たくなる。そして――音が止まった。
家は静寂に包まれ、ただ重苦しい沈黙だけが漂っていた。
翔太はそのまま恐怖で動けなくなり、眠ることもできずに朝を迎えた。夜明けとともに、ようやく体の緊張が解け、玄関へ向かう勇気を振り絞った。
翔太の玄関前に置かれたもの
玄関を開けると、そこには一枚の紙が置かれていた。古びた茶色の紙で、何かが書かれている。震える手でそれを拾い上げると、かすれた筆跡で「お前は見逃された」とだけ書かれていた。
その意味はわからなかったが、それを目にした瞬間、翔太はもうこの現象が二度と起こらないことを確信した。足音の正体も、紙の言葉の意味もわからないままだったが、翔太はそれ以上深く考えることをやめた。それは、再び何かを呼び寄せる気がしてならなかったからだ。
その後の噂
翌日、学校で翔太がクラスメイトにその体験を話すと、皆は驚きつつも噂が本当であることを改めて認識した。噂を聞いた者には一度だけ「訪問者」が現れ、何かを残して去っていく。その後は何事もなく日常が続くが、その体験を話すたび、新たな犠牲者が生まれてしまうのだ。
翔太はそれ以来、二度とその噂に関わらないようにし、他人がその話をするたびに逃げるようにその場を離れた。
この「訪問者」は、一度だけ現れ、次の標的へと移る――それがこの噂の持つ恐怖だった。
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