これは、大学の友人と夏に海へ遊びに行ったときに経験した話です。その日は快晴で、僕たち5人は車で少し離れた静かな海へドライブし、久しぶりの自由な時間を満喫していました。人気の少ない場所を選んだおかげで、ほぼ貸切状態。昼からバーベキューをしたり、泳いだりして、僕たちはリラックスした一日を過ごしていました。
午後も過ぎ、夕暮れが近づいた頃、僕たちは砂浜で波打ち際を歩きながら雑談をしていました。そのとき、友人の一人であるAが、「面白いもの見つけた」と言って、小さな貝殻を拾い上げました。その貝殻は、異様に黒ずんでいて、普通の貝とは違う不気味な雰囲気がありました。形もいびつで、まるで何かの生き物が縮こまったような感覚を覚えるものでした。
「なんか変な貝だな」と誰かが言いましたが、Aは「こういうの珍しいじゃん。お土産にするわ」と楽しそうにそれをポケットに入れました。その時は、僕たちも特に気にせず、ただそれを冗談混じりに笑い話にしていたのです。
しかし、その後からAの様子が少しおかしくなりました。夜、宿に戻ってからも何か気分が悪そうで、頭が痛いと言い出しました。僕たちは疲れが出たんだろうと軽く考え、その日は早めに就寝しました。
翌朝、Aはさらに様子が変わっていました。無口でぼんやりとした表情を浮かべ、朝食の時もほとんど何も食べず、時折何かを呟くような仕草を見せていました。「大丈夫か?」と声をかけても、曖昧に頷くだけで明確な返事はありません。そして、何より奇妙だったのは、彼が手にしていたあの貝殻です。昨日の貝殻よりも黒さが増し、まるで中から何かがこちらを覗いているような気配を感じました。
その後、僕たちは予定通り海辺を散策することにしましたが、Aだけは「今日は行かない」と言って宿に残ることになりました。僕たちが戻ってきたとき、部屋でAは床に座り込み、貝殻をじっと見つめていました。その様子は異様で、まるで何かに取り憑かれているかのようでした。
「その貝、やばいんじゃないか?捨てた方がいいって」と言うと、Aは急に怒ったように「触るな!」と叫び、僕たちを突き飛ばしました。いつも冷静なAが見せたその豹変ぶりに、僕たちは本当に恐ろしくなり、どうするべきか迷いました。結局、Aを落ち着かせるためにみんなで話し合い、その貝殻を海に返すことにしました。
日が沈む直前、僕たちはAを説得して海岸へ向かいました。彼は最初拒否していましたが、次第に力なく従うようになり、貝殻を持ったまま静かに波打ち際まで歩きました。僕たちは遠くから見守っていると、Aはポケットから貝殻を取り出し、海へと放り投げました。
その瞬間、突然強い風が吹き、海から異様なざわめきが聞こえてきました。遠くで波が立ち、まるで何かがうごめいているかのようでした。そして、その風と共にAはふっと意識を失い、その場に倒れ込みました。僕たちは急いで彼を抱え、宿へと戻りました。
その後、Aは何事もなかったかのように元の彼に戻りました。目が覚めると、昨日のことはほとんど覚えていないと言い、あの貝殻のことも「そんなのあったっけ?」と不思議そうに聞き返してきました。あれだけ執着していたことを、完全に忘れているようでした。
僕たちはその後、あの海に行くことは避けましたし、Aもそれ以来、海で貝を拾うことはなくなりました。あの貝殻が何だったのか、そしてあの風のざわめきは何を意味していたのか、今でも謎のままです。しかし、僕たちは確信しています。あれはただの自然現象ではなく、何か得体の知れない力が働いていたと。
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