それは、僕が大学のサークル仲間と海へ日帰り旅行に行った時のことだった。夏の終わり、観光客が少なくなった静かな海辺で、僕たちはのんびりと時間を過ごしていた。メンバーは僕を含めて5人。昼間はビーチバレーやスイカ割りで盛り上がり、夕方には海辺でバーベキューを楽しんだ。
夕日が沈む頃、僕たちはビーチに敷いたシートの上でまったりと過ごしていた。波の音が心地よく、みんな疲れからか、ぼんやりと海を眺めたり、寝転んだりしていた。その時、僕の視界に妙なものが映り込んだ。
「ん……今、あそこに何か見えたような……」僕はぼんやりとつぶやいたが、誰も気に留めなかった。確かに、海の少し沖のあたりで、何かが水面に浮かんでいたように見えたのだ。
気になった僕は、持ってきた双眼鏡を取り出して、その方向を覗いてみた。夕日の赤い光が海面に反射して眩しかったが、目を凝らしてみると、波間に小さな何かが浮かんでいるのが見えた。
「おい、ちょっと見てくれよ。あれ、なんだと思う?」僕は隣にいた友人の亮太に双眼鏡を渡した。彼も興味を持って覗き込んだが、次第に顔が青ざめていく。
「……あれ、人の手じゃないか?」亮太の声が震えていた。僕も再び双眼鏡を覗き込むと、確かに水面から白い手が一本だけ突き出ているように見えた。周りに人の姿はなく、その手だけがゆっくりと上下に揺れている。
「やばい、誰か溺れてるのかもしれない!」僕たちは慌てて他のメンバーに声をかけ、全員でその方向を見つめた。しかし、肉眼では何も見えない。ただ静かな海が広がっているだけだった。
「本当に手なんか見えたのか?」他のメンバーが疑いの目を向けるが、亮太も僕も確かに見たのだ。再び双眼鏡で確認しようとしたが、今度は何も見えなくなっていた。
「消えた……?」僕たちは不安と恐怖に包まれながら、しばらくその場所を見つめ続けたが、それ以上何も起きなかった。
その後、気味が悪くなった僕たちは早めに片付けをし、帰ることにした。車の中では全員無言で、誰もその「手」について触れようとはしなかった。海辺を去る際にもう一度振り返ったが、やはり海は静かで、波が優しく打ち寄せるだけだった。
あの日見た「手」は、本当に手だったのか――それとも、僕たちの勘違いだったのか。真相はわからない。ただ、あの夕暮れの海に浮かんでいた不気味な手のイメージは、今でも頭から離れない。
海は時に穏やかで美しいが、その深い底には、僕たちの知らない何かが潜んでいるのかもしれない。あの場所には、もう二度と近づかないと心に誓った
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