田舎にある築百年を超える古民家に、「俺」は家族と共に引っ越してきた。都会の喧騒を離れ、自然に囲まれた静かな暮らしを望んでの決断だった。家は古びてはいるものの、風情があり、心地よい空間だった。引っ越し初日、片付けを終えた「俺」は、何気なく家の中を探索することにした。
そのとき、ふと屋根裏に通じる古い引き戸が目に留まった。長い間開かれていないのか、埃まみれで、錆びついた金具が軋む音を立てた。引っ張ってみると、重い扉がギシギシと音を立てながら開き、細いはしごが下りてきた。好奇心に駆られ、懐中電灯を片手に登ってみると、屋根裏には古びた家具や箱が散乱していた。その中に、一冊の薄汚れたノートが目に留まった。
ノートの表紙は黄ばんでおり、古い手書きの文字で「百物語」と書かれていた。興味を持った「俺」は、そのノートを持ち帰り、夜中に読み始めた。内容は、古い民話や怪談、そしてこの家にまつわる出来事が書かれていた。読み進めるうちに、ページの端に染みのような跡が広がり、古い紙の匂いが鼻をついた。
最初は単なる興味本位だったが、次第にノートの内容に引き込まれていった。しかし、その夜から家の中で奇妙な出来事が起こり始める。
夜中、ふと目が覚めると、家全体が不気味な静けさに包まれていた。風が吹き込む音とも違う、どこか遠くから聞こえてくる囁き声が耳に届く。最初は風の音だと思っていたが、その声は徐々に近づいてくるようだった。「俺」は耳を澄まし、音の発生源を探るが、どこにも人影はない。
次の日、妻や子供たちも家の中で奇妙な現象を感じ始めた。食器棚の扉が突然開いたり、電気が勝手に点滅したり、深夜に廊下を歩く足音が聞こえたりするのだ。家族は疲れやストレスが原因や古民家特有の音だろうと考えようとしたが、そう片付けるにはあまりにも不可解な出来事が続いた。
「俺」は再び屋根裏に登り、ノートの続きを読み進めることにした。そこには、この家にまつわる歴史が詳細に記されており、過去にここで何が起こったのかが次第に明らかになってきた。
この家には、かつて「百物語」が行われたことがあったという。地元の村人たちが集まり、夜通し怪談を語り合ったが、その百話目が語り終えられた瞬間、不可解な事件が起こったという。百物語の最後の話が終わったとき、参加者の一人が突然発狂し、その後に行方不明となったのだ。
さらにノートには、百物語を記した者が「呪いを封じるため」にこのノートを屋根裏に隠したという記述があった。そして、その呪いは「読み進めることで解かれる」とも書かれていた。
その夜、家の中でさらに異常な出来事が起こった。寝室の窓が突然ガタガタと音を立て、家全体が振動し始めたかのように、物が次々と落ち始めた。耳元でささやく声は明確に聞こえるようになり、声は「続き、読んで」と繰り返していた。
恐怖に駆られた「俺」は、ノートを持ち出し、その内容を燃やそうと考えた。しかし、火をつけると、ノートは燃えずに黒い煙を吐き出し、ただ異臭を放つだけだった。その夜、ついに決心し、最後の話を読み終えることにした。
百話目は、まるでこの家の現状を語るような内容だった。最後の話が終わると、ノートには「この話を語り継ぐ者が新たな呪いを背負う」と書かれていた。そして、その瞬間、家全体が不気味な静寂に包まれ、異変はピタリと止んだ。
翌朝、家族は何事もなかったかのように普段通りの生活に戻った。だが「俺」は知っている。あのノートは、再び屋根裏に戻しただけで何も解決していないことを。
時折、屋根裏から微かに聞こえてくる足音と囁き声が、それを証明している。ノートはまだそこにあり、新たな読者を待っているのだろう。
もし、この話を聞いて興味を持ったなら、どうか気をつけて欲しい。次にそのノートを手に取るのは、あなたかもしれない――。
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