怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

語り終えた百物語が呼び出した異形のもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話

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仲間内で行った夏の合宿で、俺たちは肝試しの一環として百物語をやることに決めた。大学のサークル仲間で集まり、夜中にひとつの古い旅館を貸し切った。百物語のやり方は単純だ。一つずつ怪談を語り、最後の話が終わると「何か」が現れると言われている。

俺たちは半ば遊び感覚で、深夜の零時から語り始めた。最初はお決まりの都市伝説やテレビで聞いた怪談話、心霊スポットの話など、どこにでもあるような怖い話が続いた。酒も入っていたので、怖さよりも盛り上がりの方が勝っていた。

しかし、話が進むにつれ、次第に雰囲気が変わっていった。夜が深まり、数十話ほど話し終えたところ、部屋の中が薄暗く、冷たくなっていくのが感じられた。冗談を言い合う声も少なくなり、次第に皆の顔に緊張が走り始めた。

七十話を超えたあたりから、空気が一変した。話の途中で、ふと窓に目をやると、暗闇の中で誰かがこちらをじっと見ている気配を感じた。窓の外は木々が生い茂る庭で、人が立ち入ることは考えにくい。しかし、確かにそこには「何か」がいた。

一人が「あれ、誰かいた?」と冗談半分で言った瞬間、他のメンバーも異変に気付いた。「俺」も含め、全員が一斉に窓を見つめるが、そこには何もなかった。

その後も話を続けたが、百話に近づくにつれて、空気はますます重苦しくなっていった。いつもは賑やかなメンバーも、口数が減り、部屋の隅を気にする者が増えていった。九十話を超えた頃、窓の外から微かに聞こえる何かの足音が響いてきた。小石を踏みしめるような音が、ゆっくりと、確実にこちらに近づいてくる。

誰も口を開かず、緊張がピークに達したところで、ついに百話目が始まった。百話目を担当するのは、怪談好きで有名なSだった。彼は、地元に伝わる奇妙な伝承を語り始めた。

それは、村外れの祠に封じられた「異形のもの」にまつわる話だった。祠の封印が解かれると、「それ」は夜な夜な人の家を訪れ、その家の者を連れ去るという内容だ。Sが話を進めるにつれて、部屋の中が急に冷たくなり、誰かが「もうやめよう」と言いかけたが、Sは一切耳を貸さず、話を続けた。

最後の一言を語り終えた瞬間、部屋の明かりが消えた。真っ暗闇の中、誰かが押し殺したような息遣いを立てた。次の瞬間、ドンッと重い音が窓を叩き、全員が悲鳴を上げた。部屋の外から何かが這うような音が聞こえてくる。窓の外を覗こうとした一人が、「無理だ、見えない…」と声を震わせた。

やがて、扉をノックする音が聞こえた。3回、規則正しく、低い音で。誰も扉を開けようとせず、息を殺して身動きできずにいた。その音は何度も何度も続き、やがて止んだ。全員が顔を見合わせ、何とかその場を収めようとした時、突然、Sが立ち上がり、何かに取り憑かれたように部屋を飛び出していった。

慌てて追いかけると、彼は旅館の廊下をどこかへ向かって走り続けていた。俺たちが追いついたとき、彼は旅館の奥の窓辺に立ち、外をじっと見つめていた。「見える…見えるんだ、あいつが…」と繰り返し呟きながら、涙を流していた。

その夜を境に、Sは精神的に不安定になり、友人たちとの連絡も絶ってしまった。俺たちも、あの夜の出来事を思い出すたびに、背後に何かがいるのではないかという恐怖に苛まれている。

百物語は、ただのゲームではなかった。百話目を語り終えた瞬間、俺たちは何か「見てはいけないもの」を見てしまったのだろう。あの足音とノックの音は、未だに耳にこびりついて離れない。

そして、Sが語った祠の話は、ただの伝承ではなく、実際にこの土地に伝わる「禁忌」だったことを、後から知ることになる。俺たちはその禁忌を破ってしまったのだ。

今でも時折、夜中に家の扉をノックされることがある。決して開けてはならないと分かっているが、あの音を聞くたびに、背筋が凍りつく。もし、あなたが百物語を試すことがあれば、どうか覚えておいて欲しい。百話目を語り終えたとき、「それ」は確実にそこにいる。

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