怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

アンティークドールがもたらした恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ある日、私は友人と一緒にアンティークフェアに出かけた。古い家具や時計、絵画など、どれも歴史を感じさせる品々が並んでいた。その中でも特に目を引いたのが、ある店の一角に飾られていたアンティークドールだった。

そのドールは、19世紀後半のフランス製と書かれており、淡いピンク色のドレスに包まれ、手足は繊細に作られた磁器でできていた。顔は微笑んでいるが、どこか冷たく、ガラス製の目がまるでこちらを見つめているかのようだった。その人形に不思議な魅力を感じ、気づけば店主に値段を尋ねていた。

店主は無表情で「このドールは少し曰く付きだ」と言ったが、詳しいことは教えてくれなかった。それでも、どうしてもそのドールが気になり、手頃な価格だったこともあって購入を決めた。

家に帰り、リビングの棚にそのドールを飾った。家のインテリアにも馴染み、部屋に少しだけ優雅な雰囲気が加わった。最初の数日は特に問題もなく、ドールを気に入ってさえいた。

しかし、ある夜から奇妙なことが起こり始めた。

夜中、ふと目が覚めると、何かがリビングから音を立てているのが聞こえた。カチカチと物がぶつかるような音や、かすかな足音のような音が混ざり合っていた。寝ぼけていたせいかもしれないと思い、その夜は無理やり眠りについた。

だが、それから毎晩のように、リビングから同じような物音が聞こえるようになった。最初は気のせいだと思っていたが、日が経つにつれて、その音がどんどん大きくなり、無視できないものになっていった。

ある夜、我慢できなくなり、音の正体を確かめるためにリビングに行った。すると、薄暗い部屋の中で、ドールが飾られている棚のあたりから異様な雰囲気を感じた。照明をつけると、ドールは元の場所に座っていたが、その目は以前よりも鮮明に輝いているように見えた。まるで、何かを伝えたがっているかのように。

その日から、ドールの位置が少しずつ変わるようになった。朝起きると、ドールが棚の端に寄っていたり、顔の向きが微妙に変わっていたりした。誰も触った覚えはないのに、まるで自分で動いたかのようだった。不安になった私は友人に相談したが、「気のせいだろう」と一笑に付されただけだった。

次第に、家の中で奇妙な現象が頻発するようになった。夜中に階段を上がるような足音が聞こえたり、ドアが勝手に開閉したり、物が突然落ちたりする。さらに、寝ているときに耳元で何かが囁くような感覚に襲われることも増えていった。声は低くてはっきりと聞こえないが、確実に自分に向けられている。

ついに、ある晩、決定的な出来事が起こった。

深夜、またしても物音が聞こえたため、リビングへと向かった。部屋に入ると、ドールは棚から落ち、床に横たわっていた。だが、ただ落ちたわけではなかった。ドールの目がこちらをじっと見つめ、笑っているように見えたのだ。その瞬間、全身に寒気が走り、急いでドールを拾い上げて元の場所に戻そうとした。

すると、手に持ったドールが異様に冷たく、まるで生きているかのように重く感じられた。さらに、その冷たさは手の中から徐々に体全体に広がり、心臓が凍るような感覚に襲われた。恐怖で手を離すと、ドールは音もなく床に転がり、その目がさらに冷たく輝いているように見えた。

恐ろしくなり、その夜は別の部屋で寝ることにしたが、寝室のドアの隙間からじっと見られているような気がして、まともに眠れなかったからだ。

翌日、私は限界を感じ、ドールを処分することを決意した。ネットで調べて最寄りの神社に持ち込み、お祓いをお願いした。神主はドールを見て渋い顔をし、「このドールには何かが宿っている」と言いながら、厳重にお祓いを行ってくれた。

ドールは最終的に供養され、私の手元には二度と戻ってこなかった。それから、家の中での怪現象はぴたりと止まり、平穏な日常が戻った。

しかし、あのドールの冷たい目と微笑みは今でも脳裏に焼き付いて離れない。時折、夜中に目を覚ますと、耳元で何かが囁くような気がする。「戻ってくるよ…」と。

二度とアンティークドールには手を出さないと心に決めたが、あのドールが本当に消えたのかどうか、確信が持てない。もしかしたら、どこか別の場所で新たな持ち主を待っているのかもしれない。

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