怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

忘れられた人形が導いた優しい結末 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

投稿日:

ある日、私は引っ越し先を探していた。仕事の関係で転勤が決まり、古びたアパートに住むことになった。築年数はかなり経っており、少し薄暗くて不気味な雰囲気もあったが、家賃が安く、通勤にも便利だったため、そこに決めた。

引っ越し当日、荷物を片付け終えて部屋を見渡していると、クローゼットの奥に古い木箱が置かれているのに気づいた。前の住人が忘れていったものだろうかと思いながらも、興味が湧いて箱を開けてみた。中には埃をかぶった古い日本人形が入っていた。

その人形は、着物を着た女の子の姿をしていた。髪は黒く、顔は白く塗られ、瞳はガラス玉でできている。どこか寂しげな表情で、まるで誰かを待っているかのようだった。人形の顔が少し怖く感じたが、放置するのも気が引けたので、リビングの棚にそっと飾ることにした。

それから数日後、家の中で妙なことが起こり始めた。

夜になると、どこからか足音のような音が聞こえてくるのだ。特に深夜、リビングからカタカタと物が揺れる音がする。恐る恐る確認しても、特に変わったことはない。ただ、人形がじっとこちらを見つめているように感じるだけだった。

次第に、夜中に人形のいる棚から、カチカチと音がすることが増えてきた。怖くなった私は、友人にその話をすると、「人形に何か宿ってるんじゃない?」と冗談交じりに言われ、ますます不安になった。

その夜、いつものようにリビングでくつろいでいると、急に電気がチカチカと点滅し始めた。心臓が早鐘のように鳴り、体が固まったまま動けなくなった。目の端で、人形が微かに動いたように見えたのだ。

勇気を出して棚に近づくと、人形の目が光っているように感じた。まさか、本当に何かがこの人形に宿っているのか? そう思った瞬間、突然視界がぼやけ、気を失いそうになった。

気がつくと、リビングのテーブルの上に、何かが置かれていた。それは、昔ながらの手紙で、古びた封筒に包まれていた。中を開けると、震える手で書かれた文字が浮かび上がってきた。

「この人形を、どうか捨てないでください。」

手紙には、前の持ち主がこの人形に込めた思いが綴られていた。その人は、幼い頃にこの人形をもらい、ずっと大切にしていたこと。しかし、病のために人形とお別れしなければならないこと。家族のように大切にしていた人形を、ずっと気にかけていたことが書かれていた。
なぜ、そのような人形が私部屋に、そしてなぜ私の部屋にこの手紙があるのかは一切不明だった。

しかし、それを読んだ瞬間、私は今まで感じていた不安が一気に和らいだ。人形は怖がらせるつもりではなく、ただ寂しがっていただけだったのかもしれない。誰かに捨てられることなく、また大切にされたいと思っていたのだろう。

私は人形に向かって「大丈夫だよ、ここで一緒に暮らそう」と声をかけた。その瞬間、不思議とリビングの空気が柔らかく感じられた。電気のチカチカもなくなり、カタカタと鳴る音も聞こえなくなった。

それからというもの、人形はリビングの一角で穏やかな表情を見せるようになった気がした。夜中に物音がすることもなくなり、まるで家全体が安らかになったような感覚が広がっていた。

今では、その人形が家の守り神のように感じられる。寂しそうな顔も、少しだけ優しくなった気がする。時折、帰宅したときに「ただいま」と声をかけると、なんだか温かい気持ちになる。

あの古びた日本人形は、確かに長い年月を孤独に過ごしてきたかもしれない。でも、今はここで新たな仲間として、共に穏やかな日々を過ごしている。怖いと思っていたものが、実はただの寂しさから来るものだったことに気づけたとき、私の中で恐怖はすっかり消え去った。

今でも、リビングの棚にはあの人形が静かに座っている。以前よりもずっと穏やかな表情で。

マンガ無料立ち読み

マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40%ポイント還元中

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】


ロリポップ!

ムームーサーバー




新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp

ほんとうにあった怖い話「年上の彼女」



ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ]

価格:1078円
(2024/7/23 13:25時点)
感想(1件)



-怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集
-

Copyright© 映画・ドラマ・本・怖い話・奇妙な話・不思議な話・短編・ガールズ戦士シリーズ・Girls2(ガールズガールズ)などの紹介・感想ブログです。 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.