ある日、私は地元のフリーマーケットで古い人形を手に入れた。特にアンティークに興味があるわけではなかったが、その日だけはなぜか人形に惹かれてしまった。人形は20センチほどの小さなもので、白いドレスを着た女の子の姿をしていた。髪はくるくるとカールした金髪で、青いガラスの瞳が特徴的だった。
売り主は年配の女性で、「この人形、長い間うちにあったけど、最近どうも不気味でね」と苦笑いしながら話してくれた。女性は安価で譲ると言い、私は特に深く考えずにその人形を購入した。
家に帰り、その人形を棚に飾った。部屋のインテリアにもよく合っていたし、最初は気に入っていた。だが、数日が経つと、徐々に奇妙なことが起こり始めた。
最初に気づいたのは、人形の向きが勝手に変わっていることだった。朝出かける前に正面を向けておいたはずなのに、帰宅すると少しだけ左に向いていたり、棚の端に寄っていたりする。最初はただの気のせいかと思っていたが、日が経つにつれてそのズレが明らかになってきた。
「誰かが勝手に動かしているのか?」と疑うほど頻繁に位置が変わるようになり、不安が募った。ある日、明らかに変だと感じたため、棚に置く前に人形の向きをしっかり確認して出かけた。しかし、帰宅するとまたもや違う向きを向いていた。そのとき、背筋に冷たいものが走った。
さらに奇妙なことに、夜中にふと目を覚ますと、部屋の中で微かなカタカタという音が聞こえるようになった。音の出所を探っていくと、やはりそれは人形のある棚からだった。照明をつけて確認すると、人形は元の場所にじっと座っている。しかし、ガラスの瞳はどこか生きているかのように光って見え、こちらを見つめているようだった。
その夜、私は試しにスマホで動画を撮影することにした。寝る前に人形を棚に置き、カメラを向けて録画をセットした。そして、翌朝、期待と不安が入り混じる中で録画を確認した。
再生ボタンを押すと、最初は何も変わったことは起きなかった。部屋は静まり返り、人形は動かない。しかし、時間が進むにつれて、じわじわと不気味なものが映り始めた。
深夜、時計が午前2時を指した頃、画面に微かな動きが現れた。人形の頭が、ゆっくりと右に傾いたのだ。そして、さらに時間が経つと、今度は左に傾く。そして、ほんのわずかに顔がこちらに向くように動いていた。何度も見返したが、確かに人形は動いていた。部屋の中には誰もおらず、風で動くようなものでもない。
それを見た瞬間、恐怖に襲われ、すぐに動画を停止した。人形に何か「良くないもの」が宿っているのではないかと感じ、翌日、友人に相談した。友人はオカルトに詳しく、「古い人形には魂が宿ることがある」と話してくれた。さらに、彼は冗談半分に「もしかしたら、その人形が君に何かを伝えたがっているんじゃないか?」と言った。
その言葉に興味を引かれ、私はもう一度人形をじっくり観察してみることにした。人形の瞳を見つめると、何かが胸の中で引っかかる感覚があった。そこで、人形を手に取り、丁寧に調べてみると、驚くべきことにドレスの裏に小さな紙片が縫い込まれているのを見つけた。
紙片を取り出し、広げてみると、そこには古びた文字で「助けて」という一言が書かれていた。意味はわからないが、誰かがこの人形に何かを封じ込めたのではないか、そんな考えが頭をよぎった。
結局、私はその人形を近くの神社に持ち込み、供養してもらうことにした。神主に話を聞いてもらうと、「この人形は長い間、何かを抱え込んでいたようだね」と言われた。供養が済んだ後、人形は清らかな場所で安らかに眠ることになった。
その後、家の中の不気味な現象はすっかりなくなり、穏やかな日々が戻ってきた。だが、あのガラスの瞳がこちらを見つめていた感覚は今でも忘れられない。
奇妙な話だが、あの人形は誰かの思いを抱えていたのかもしれない。そして、それが解放されたことで、ようやく安らぎを得られたのだろうと、私は今でも信じている。
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