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深夜オフィスに響く赤ちゃんの泣き声と叩かれるドア 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その日、私は急なトラブル対応のため、夜遅くまでオフィスに残っていた。普段なら定時で帰るのだが、緊急の案件が舞い込んできて、どうしてもその日のうちに対応を終わらせる必要があった。

ビルは都心の高層オフィスビルで、オフィスがあるのは20階。昼間は社員たちが行き交い活気に溢れているが、夜になるとフロアは静まり返り、わずかな機械音とエアコンの風が耳に届く程度だった。

同僚たちはみんな帰宅し、フロアには私一人だけ。仕事に集中しようとしたが、ふと気づけば時計の針はすでに深夜1時を指していた。

「もう少しで終わる…」

そう自分に言い聞かせ、再びパソコンに向かった。だが、集中しようとするたびに、どこからか妙な音が聞こえてくる。最初は気のせいかと思い、作業を続けたが、その音はだんだんと大きくなってきた。

それは、赤ちゃんの泣き声だった。

フロア全体に響き渡るような、か細い泣き声がどこからともなく聞こえてくる。オフィスビルの20階に、深夜のこんな時間に赤ちゃんがいるはずがない。そう思いながらも、耳を澄ませると確かに泣き声が続いている。

「まさか…何かの音が赤ちゃんの声に聞こえるのか?」

不安が胸をよぎり、私は立ち上がってフロアを見渡した。デスクの間を歩いてみたが、誰もいない。ただ、泣き声だけがどこからともなく聞こえてくる。冷たい汗が背中を流れ、心臓がドキドキと音を立て始めた。

泣き声は次第に大きくなり、まるでフロア全体を包み込むように響いていた。まさに耳元で泣かれているような感覚に襲われ、私は恐怖で体が硬直した。

「こんなはずはない…!」

そう思いながらも、何か確かめずにはいられず、泣き声の出所を探そうと奥の会議室へ向かった。会議室のドアは閉まっていたが、そのすぐ向こうから、赤ちゃんの泣き声がはっきりと聞こえた。

恐る恐るドアノブに手をかけた瞬間、突然ドアが「バン!バン!」と激しく叩かれた。思わず手を引っ込め、数歩後ずさる。ドアが壊れるかと思うほどの勢いで、何度も何度も叩かれている。まるで中に誰かが閉じ込められていて、必死に助けを求めているかのようだった。

心臓が早鐘のように鳴り響き、全身が震えた。ドアの向こうに何がいるのか確認したい気持ちと、絶対に開けてはいけないという直感がぶつかり合った。

しかし、その時、ドアの叩かれる音が急に止み、代わりに赤ちゃんの泣き声が再び響き始めた。今度は泣き声が遠ざかり、まるでフロアの隅に向かって消えていくように感じた。

「これは夢だ、幻覚だ…」

必死に自分にそう言い聞かせ、震える手でスマホを取り出し、時間を確認すると、すでに深夜2時を過ぎていた。この異常な状況から逃げ出したい一心で、私は荷物を急いでまとめ、オフィスを出る準備をした。

エレベーターに向かう途中も、まだ微かに泣き声が聞こえていたが、振り返る勇気はなかった。エレベーターのドアが閉まるまで、背後から視線を感じ、恐怖で息が詰まりそうだった。

エレベーターが1階に到着し、外に出ると、ようやく安心感が広がった。ビルの外は静かで、涼しい夜風が肌に心地よかった。だが、耳にはまだあの赤ちゃんの泣き声とドアを叩く音が残響のようにこびりついていた。

翌朝、オフィスに出勤すると、昨夜の出来事が嘘のように感じられた。同僚たちはいつも通り笑顔で仕事をしており、静かに会議室を確認してみたが、特に変わった様子はない。ただ、あの夜の記憶があまりにも鮮明で、どうしてもただの幻覚だったとは思えなかった。
同僚に話してみたが、誰もそんな声を聞いたことはないという。

それ以来、私は深夜までオフィスに残ることは避けるようにしている。あの赤ちゃんの泣き声と、ドアを激しく叩く音が再び聞こえてくるのではないかという恐怖が、今でも消えないからだ。深夜のオフィスには、何かが潜んでいるのかもしれない。それが何であれ、私は二度と関わりたくないと思っている。

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