山田翔太(やまだ しょうた)は、仕事の都合で新しい家に引っ越すことになった。そこは古びた屋敷で、かつては裕福な一家が住んでいたらしいが、今はすっかり寂れてしまっている。屋敷の持ち主が格安で貸し出してくれたこともあり、翔太はその物件に決めた。大きな庭に広々とした部屋、少し手を加えれば十分快適に暮らせそうだった。
引っ越し当日、荷物の整理を終えた翔太は、屋敷内を探索し始めた。どの部屋も古い家具や装飾品が残されており、時代を感じさせる雰囲気が漂っている。屋敷の中を一通り見て回った後、翔太は最後に屋根裏部屋を調べることにした。暗く狭い階段を上り、きしむ扉を開けると、そこには埃(ほこり)まみれの古い箱やガラクタが山積みになっていた。
彼はふと、奥に何かがあるのに気づいた。古ぼけた箱の中から出てきたのは、一体のぬいぐるみだった。年季の入ったクマのぬいぐるみで、どこか見覚えがある気がした。翔太はそのぬいぐるみを手に取ると、不意に懐かしさがこみ上げてきた。
「これ…子供の頃、持ってたやつに似てるな…」
彼は無意識にそのぬいぐるみを抱きしめた。すると、頭の中に急に強烈な映像が流れ込んできた。暗い部屋、すすり泣く声、小さな自分の姿――まるで昔の記憶が一気に蘇るような感覚だった。
翔太は驚いてぬいぐるみを放り投げたが、頭痛とともにその記憶はさらに鮮明になっていく。幼い頃、彼はこの屋敷に遊びに来たことがあった。そして、その時に見てしまった何か――その記憶が、彼の心に封印されていたのだ。
それから数日間、翔太はそのぬいぐるみのことが頭から離れなかった。夜になると、不気味な夢を見るようになった。夢の中で、彼は子供の頃の自分になっており、屋敷の中をさまよっていた。そして、必ず夢の終わりには、あの屋根裏部屋で何か恐ろしいものに出くわして目が覚めるのだ。
次第に、彼の記憶のピースがつながり始めた。子供の頃、誰も住んでいないこの屋敷に友達と侵入をした。子供だったので怖いもの見たさもあったと思う。その時に、彼は当時親しくしていた友達と一緒に隠れんぼをしていた。友達がどこに隠れたのかを探していた彼は、あの屋根裏部屋にたどり着いた。そこで彼が見たもの――それは、友達がぐったりとした姿で倒れている光景だった。翔太は恐怖で声も出せず、その後のことをすっかり記憶から消し去っていた。
しかし、その記憶が今、ぬいぐるみを通じて呼び覚まされてしまったのだ。友達がなぜ倒れていたのか、そしてその後どうなったのか、翔太は何も知らない。ただ、その友達が見つかることはなかったという噂だけをぼんやりと覚えている。
ある晩、翔太はどうしてもその真相を確かめたくなり、再び屋根裏部屋に足を運んだ。懐中電灯を手に、重い扉を押し開ける。屋根裏部屋は相変わらず埃っぽく、古い物が散乱していた。彼はぬいぐるみがあった場所を探し、そこに目を凝らした。
すると、床にある古い板が微妙に浮き上がっていることに気づいた。彼は恐る恐るその板を外してみた。すると、そこにはもう一つ小さな空間が隠されており、中には朽ち果てた子供用の靴と、古びた手紙があった。
手紙には震えた文字で「助けて」とだけ書かれていた。それを見た瞬間、翔太は背後に冷たい気配を感じた。振り返ると、そこには友達の顔をした人影が立っていた。目は真っ黒で、口元は歪んだ笑みを浮かべている。
翔太はその場から逃げ出したかったが、身体が動かない。影はゆっくりと彼に近づき、やがて耳元で囁いた。「一緒に隠れよう…今度は見つけてあげるよ…」
その声は、あの時の友達の声と同じだった。翔太は必死に叫ぼうとしたが、声が出ない。影がさらに近づき、冷たい手が彼の腕を掴んだ瞬間、彼は気を失った。
次に目を覚ました時、翔太は自分の部屋のベッドに横たわっていた。しかし、何かが違う。彼は確かに屋根裏で何かに追い詰められていたはずだが、それが夢だったのか現実だったのか区別がつかない。彼の手元には、あのクマのぬいぐるみがしっかりと抱きしめられていた。
その後も、翔太は毎晩のように悪夢にうなされるようになった。屋根裏部屋に行く勇気はもうなく、ぬいぐるみを捨てることも考えたが、どうしても手放すことができない。ぬいぐるみはまるで彼の心を支配しているかのようだった。
やがて翔太は次第に正気を失い、仕事も手につかなくなっていった。そしてある日、彼はふと気づいた。自分が今、ぬいぐるみを抱きしめながら、あの屋根裏部屋に立っていることに。
屋根裏に眠る記憶とぬいぐるみが引き起こす恐怖――忘れられた過去があなたを再び追い詰めるかもしれません。
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