消えたファイルが残した痕跡―パソコンに潜む呪われた記録体　怖い話　奇妙な話　不思議な話　短編

体験談：見つけてはいけなかったデータの正体

数年前のことです。僕は普段からパソコンを使って作業をしていますが、ある日、知り合いから古いデスクトップPCを譲り受けました。そこそこスペックが高いものだったので、サブPCとして活用しようと思い、初期化して使い始めました。しかし、そのPCには、後に僕を恐怖に陥れる“何か”が潜んでいたのです。

最初は普通に動作していたものの、ある日突然、デスクトップ上に見覚えのないフォルダが現れました。フォルダ名は「私を見つけて」。まるでホラー映画のような典型的な名前に、最初はいたずらかと思いました。中を覗いてみると、何も入っていないかのように空の状態でした。しかし、隠しファイルを表示させる設定にしてみると、いくつかのファイルが現れました。ファイル名は無意味な文字列や記号の羅列で、内容が分からないものばかりでした。

興味本位でその中の一つを開いてみると、古い日記のようなテキストが表示されました。日付は数年前のもので、内容は淡々とした日常の出来事が書かれていました。しかし、ページを進めるにつれて、記述は次第におかしな方向へと変わっていきました。

「○月△日。深夜、パソコンの画面に突然現れたのは、見知らぬ顔。僕を見ている。」

次の日付の記録には、こう書かれていました。

「○月×日。ファイルが勝手に増えている。開いてみると、不気味な画像が映っていた。消しても消しても戻ってくる…。」

それ以降の日記は、ただひたすらに「助けて」「誰かが見ている」という言葉が繰り返されるだけでした。その文字の端々から、書いた人物の精神が崩壊していく様子が伝わってきて、背筋が凍るような感覚に襲われました。

それでも僕は、単なる作り話だろうと自分に言い聞かせ、さらにフォルダの中を調べました。すると、奇妙な画像ファイルが次々と見つかりました。薄暗い部屋の中で撮影されたと思われる写真が何枚もあり、そのほとんどにぼんやりとした影のようなものが写り込んでいます。影はどの写真にも同じような位置にいて、徐々にこちらに近づいてくるように見えました。

不気味さを感じながらも、最後のファイルを開いてみると、そこには短い動画が入っていました。再生すると、画面は真っ暗で、ノイズが混じるだけの無音の映像が続きます。しかし、突然ノイズが途切れ、画面が一瞬だけ明るくなった瞬間、カメラの前に誰かが立っているのが見えました。白い服を着た人物がこちらをじっと見つめているように見えます。その顔はぼやけていてはっきりと分からないのですが、目だけは異常に黒く、そして大きく感じられました。

その後、映像は何度もフリーズしたり、突然途切れたりを繰り返しましたが、最後に一瞬だけ、画面に大きな文字が浮かび上がりました。

「見つけた」

その瞬間、パソコンが強制的に再起動されました。恐怖に駆られた僕は、すぐにそのフォルダごとすべてのファイルを削除しようとしましたが、どうしても削除できません。エラーメッセージが表示され、「アクセス拒否」とだけ書かれています。何度試しても同じ結果でした。

そこで、パソコンを再度初期化することに決めました。データをすべて消去し、OSをクリーンインストールしました。初期化が完了し、再び安心して使い始めようとしたその瞬間、デスクトップに再びあのフォルダが現れました。「私を見つけて」と。

何度も初期化を試みましたが、そのフォルダは消えることなく、何度でもデスクトップに戻ってきました。最終的に僕は、そのパソコンを手放すことにしました。処分しようと考えましたが、気味が悪くて、リサイクルショップに引き取ってもらいました。それからは、二度とそのパソコンのことは考えないようにしています。

今でも思い出すと身震いしますが、あのフォルダにあったデータは一体何だったのか、そしてそれを書き残した人物は何を見ていたのかは謎のままです。ただ、あのパソコンには“何か”が宿っていて、その“何か”はまだ誰かを探しているのかもしれません。

もし、あなたのパソコンにも見覚えのないフォルダが突然現れたら、決して開かないほうがいいでしょう。その中にあるのは、あなたを巻き込もうとする“何か”かもしれないからです。

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