怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

屋根裏の囁き 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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主人公の佐藤健一は、古い一軒家を格安で手に入れました。築年数がかなり経っており、内装も古びていましたが、健一はそのレトロな雰囲気に魅了され、この家での新しい生活を楽しみにしていました。庭には大きな木があり、家の中にはどこかしら懐かしい匂いが漂っています。しかし、この家には一つだけ、不気味な場所がありました。

それは、屋根裏部屋でした。

屋根裏部屋は狭く、天井が低く、薄暗い空間です。梯子を登って小さな扉を開けると、古びた木材の香りと共に、冷たい空気が流れ込んできます。前の住人が残したのか、埃をかぶった古い家具や箱が散乱していました。健一はその屋根裏に何度か足を運んで掃除を試みましたが、いつも不気味な気配を感じ、長居することはありませんでした。

そんなある日、健一は仕事から帰宅し、家に入ると何かが違うことに気づきました。家全体に重苦しい雰囲気が漂っており、何かが視線を送っているような不快感を覚えました。特にその感覚が強まるのが、屋根裏部屋のある廊下です。

その夜、健一はベッドに入ってもなかなか眠りにつけませんでした。家の中は静かで、聞こえるのは風が木々を揺らす音だけです。しかし、夜が更けるにつれ、健一は天井裏から微かな音を聞きました。それは、何かが擦れるような音や、軽く叩く音、そして不明瞭な囁き声でした。

「誰かいるのか…?」

健一は恐る恐るベッドから起き上がり、懐中電灯を手にして、音のする方向へ向かいました。屋根裏部屋の梯子の前に立つと、音が止まりました。暗闇の中、健一はしばらく動けずに立ち尽くしていましたが、やがて意を決して梯子を登り始めました。扉を開けると、屋根裏の冷たい空気が肌を刺し、懐中電灯の光が埃っぽい空間を照らしました。

しかし、そこには何もありませんでした。家具や箱はそのままで、特に異常なものは見当たりません。健一は心の中で安堵し、再び梯子を降りようとしました。しかし、その瞬間、背後で何かが動く気配を感じました。

振り返ると、古い家具の影から何かが這い出してくるのが見えました。それは、ぼろぼろの服をまとった、痩せ細った人影でした。顔は見えず、長い髪が顔を覆い隠していました。人影は健一の方に向かって、ゆっくりと這い寄ってきます。その動きは不自然で、まるで関節が逆に曲がっているかのようでした。

健一は恐怖で凍りつき、動くことができませんでした。人影は彼の足元に近づき、低い声で囁きました。「…出て行け…ここは私の場所だ…」

その声は、まるで何人もの人間が同時に話しているかのように響き、健一の全身に悪寒が走りました。彼はやっとのことで体を動かし、屋根裏部屋から飛び出しました。扉を閉め、梯子を蹴り倒しながら、全速力で階下に駆け降りました。

その夜、健一は家から逃げ出し、近くのホテルに泊まりました。翌朝、恐る恐る家に戻ると、屋根裏部屋の扉は閉ざされ、梯子も元の場所に戻っていました。しかし、健一はもう二度とその屋根裏に足を踏み入れることはありませんでした。

その後、健一はその家をすぐに手放しました。引っ越しの際に、近所の老人が健一にこう話しかけました。「あの家の屋根裏には、昔から何かがいるって噂だ。前の住人も、あそこから変な声がするって言ってたんだよ。」

健一はその言葉を聞いて、背筋が凍る思いをしました。あの屋根裏には、今も何かが住んでいるのです。それは、健一に「ここは私の場所だ」と囁いた何者か…。

新しい住人がその屋根裏に足を踏み入れないことを、健一はただ願うばかりでした。

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