見えない友だち　怖い話　奇妙な話　不思議な話　短編集

小学校2年生の裕太は、両親と一緒に新しい町に引っ越してきました。新しい家は大きな庭付きで、家の周りには木々が茂り、自然がいっぱいでした。しかし、裕太にとって一番嬉しかったのは、自分の部屋ができたことでした。裕太は自分の部屋で新しいおもちゃを広げ、毎日楽しく遊んでいました。

引っ越してからしばらく経ったある日、裕太は部屋で遊んでいるときに、何かが視界の隅に映った気がしました。振り返ると、そこには誰もいませんでしたが、妙な感じが心に残りました。それ以来、時折、誰かが部屋の隅に立っているような気配を感じるようになりました。怖いというよりも、むしろ誰かと一緒にいるような安心感がありました。

数日後、裕太はひとりごとのように「誰かいるの？」と部屋の中に問いかけてみました。すると、ふと窓の外から笑い声が聞こえてきました。その声は、まるで同じ年頃の子供が笑っているかのように響きました。裕太は窓を開けて外を見ましたが、そこには誰もいませんでした。

その夜、裕太はベッドに入ると、隣で誰かが囁くような声を聞きました。「一緒に遊ぼうよ」と、優しく、そして楽しそうな声です。裕太は驚いて周りを見回しましたが、暗闇の中には誰もいません。翌朝、裕太はそのことを両親に話しましたが、母親は「夢でも見たんじゃない？」と笑って取り合ってくれませんでした。

しかし、裕太はその声を確かに聞いたのです。それからというもの、日中でも時々その声が聞こえるようになりました。「ここで遊ぼう」とか「外に出ようよ」といった声が、家の中や庭で響くのです。そして、裕太がその声に従うと、何故か不思議な出来事が起こるようになりました。

ある日、裕太が「一緒に遊ぼう」と聞こえた声に従い、庭の木の下に行くと、そこに小さな古いおもちゃの車が埋まっているのを見つけました。車は古びていましたが、どこか愛着が湧くもので、裕太はそのおもちゃで夢中になって遊びました。後で母親にそのおもちゃを見せると、母親は驚いた顔をして「これは昔、ここに住んでいた子供のものかしら…」と呟きました。

また別の日、裕太が家の中でかくれんぼをしていると、例の声が「こっちだよ」と囁きました。その声に導かれるまま、裕太はキッチンの奥にある小さな物置に隠れると、そこで古びたアルバムを見つけました。アルバムの中には、昔この家に住んでいた家族の写真がたくさん貼られていました。そこには、笑顔の子供が写っていて、まるで今の裕太と同じくらいの年齢のように見えました。

裕太はこの不思議な友だちにすっかり慣れ、彼との遊びを楽しむようになりました。時には庭でかくれんぼをしたり、時には家の中で古いおもちゃを見つけたりしました。そのたびに、声が「よく見つけたね」と褒めてくれるので、裕太は嬉しくなりました。

しかし、ある夜、裕太がベッドで眠りにつこうとしたとき、声がいつもとは違う響きを帯びて囁きました。「もうすぐさよならだよ」。裕太はその言葉に驚いて、声の主を探しましたが、暗い部屋の中には誰もいませんでした。その夜は不安で眠れないまま、朝を迎えました。

翌日から、不思議な声はぱったりと聞こえなくなりました。裕太は寂しさを感じつつも、学校で友だちと過ごす時間が増え、少しずつそのことを忘れていきました。しかし、家の中で一人になると、どこか懐かしい気持ちが湧いてきます。まるで、もう会えなくなった友だちを思い出すかのように。

裕太はある日、再びあのアルバムを手に取りました。ページをめくりながら、裕太はふと気づきました。写真の中の子供の笑顔が、少しずつ消えているように見えたのです。まるで、さよならを告げた時点で、その子供が写真の中からいなくなろうとしているかのように。

最後のページには、子供がいない家族の写真が残されていました。そこには、どこか寂しそうな両親が映っており、その家族の幸せな時が過ぎ去ったことを物語っているようでした。

裕太はその写真を見つめながら、もう一度声が聞こえることを期待しましたが、家は静かなままでした。しかし、裕太は心の中で、その不思議な友だちがまたどこかで楽しく遊んでいることを願いながら、アルバムを大切に閉じました。

ほんとうにあった怖い話「年上の彼女」

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