怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

心霊スポットでの後悔と入院中の恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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僕は、田中翔太、30代の会社員です。友人たちと休みの日に飲み会をしたり、ドライブに出かけたりと、平凡な日々を過ごしていました。僕たちのグループは特に好奇心旺盛で、新しいことに挑戦するのが好きでした。そんな僕たちは、ある晩、少し悪ふざけのつもりで心霊スポットに行くことを決めました。

その場所は、地元でも有名な廃病院でした。長い間放置され、噂では幽霊が出るとささやかれている場所でした。僕たちは「怖いもの見たさ」で行くことにし、夜中に車を走らせて現場に到着しました。建物は薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていましたが、僕たちは「こんな噂話、どうせ嘘だろう」と軽く考えていました。

中に入ると、腐食した壁や壊れたベッド、散乱した医療器具が目に飛び込んできました。僕たちは怖がりながらも笑い合い、スマホで動画を撮ったり、ふざけて声を出したりしていました。ところが、病院の奥に進んだとき、不意に冷たい風が吹き抜け、全員が黙り込んでしまいました。

その時、はっきりとした声で「帰れ」と聞こえました。僕たちは一瞬凍りつき、全員が顔を見合わせました。誰も声を出していないはずなのに、確かに聞こえたのです。怖くなった僕たちは、その場を離れ、慌てて病院を出ました。帰りの車内では誰もが黙り込み、すぐにこの体験を忘れようとしました。

しかし、それ以来、僕の周りで奇妙なことが起こり始めました。家に帰ってから、夜になると誰もいない部屋で足音が聞こえたり、寝ていると金縛りにあったりしました。さらに、体調も悪くなり始めました。頭痛やめまいが頻繁に起こり、食欲もなく、仕事にも支障が出るほどでした。

「やっぱり、あの廃病院で何かを連れてきてしまったのかもしれない…」

そう思いながらも、僕は自分の体調を気にして病院に行くことにしました。検査を受けた結果、特に大きな異常は見つかりませんでしたが、体調が改善しないため、入院することになりました。

入院生活が始まりましたが、体調は一向に良くならず、むしろ悪化していくばかりでした。特に夜になると、病室で不気味な気配を感じることが多くなりました。ある夜、僕がベッドで横になっていると、突然部屋の中に誰かがいるような感覚に襲われました。薄暗い部屋の中で、ふと目を開けると、ベッドの横に黒い影が立っているのを見たのです。

心臓が凍りつく思いでした。影はじっと僕を見下ろしており、動くことなくそこに佇んでいました。僕は恐怖で体が動かず、ただ息を潜めるしかありませんでした。影は次第に僕に近づいてくるようで、全身に冷たい汗が滲みました。

「お願いだから、消えてくれ…」

心の中でそう祈り続けましたが、影は消えるどころかますます近づいてきました。体が硬直し、呼吸が荒くなり、逃げ出すこともできないまま、影は僕の頭上にまで迫ってきました。全身が凍りつくような感覚を覚え、とうとう恐怖の限界に達しました。

その時、僕は無意識に口を開き、必死に謝り始めました。

「ごめんなさい、もう二度とふざけて心霊スポットなんかに行きません!本当にごめんなさい!」

心の底からの謝罪でした。恐怖と後悔が混じり合い、涙までこぼれました。謝るしかない、これで何とかこの状況を乗り越えようと必死でした。

その瞬間、影が消え去り、体がふっと軽くなりました。まるで重りが取れたように、僕はそのまま気を失ってしまいました。

翌朝、目が覚めると、僕は病院のベッドの上で汗びっしょりになっていました。しかし、不思議なことに体調は驚くほど回復していました。頭痛やめまいは消え、体も軽く、まるで別人のような感覚でした。

「昨日のあれは…一体何だったんだ…」

僕は自分に問いかけました。あの恐ろしい体験が、どうして体調の回復につながったのか、全くわからなかった。ただ一つ確かなことは、僕が心の底から必死に謝ったことで、何かが変わったということでした。

その後、医師からも体調は回復したと言われ、退院することができました。しかし、あの恐怖体験が忘れられません。僕はその後、決して心霊スポットに遊び半分で行くことはなく、肝試しの話が出ても断固として拒否するようになりました。

あの時、僕が経験したことが現実だったのか、それともただの悪夢だったのか、今でもわかりません。しかし、もう二度とあんな思いはしたくありません。軽い気持ちで触れるべきではないものが、世の中には確かに存在するのだと痛感しました。

そして、僕は心の中で固く誓いました。

「もう絶対に、遊び半分で心霊スポットには行かない…」



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