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誰もいないはずの追跡者――背後に迫る不気味な足音 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、いつもと変わらない平凡な夕方の散歩だった。仕事から解放された私は、気分転換にと家の近くにある公園へ向かうことにした。少し肌寒くなってきた秋の夕暮れ、空は茜色に染まり、日が沈むまでのわずかな時間を楽しもうと考えていた。

公園は家から歩いて10分ほどの距離にあり、私はその道を何度も通っていた。いつものようにイヤホンを耳に装着し、好きな音楽を聞きながら歩いていた。しかし、その日は何かが違った。いつもと同じ道を歩いているはずなのに、何かしらの違和感を感じたのだ。

公園に到着すると、日が沈む寸前の空が美しく、しばらくベンチに腰掛けてその景色を眺めていた。しかし、ふとした瞬間、背筋に冷たいものが走った。何かが、私の背後にいるような気がしたのだ。振り返ると、誰もいない。遠くで遊んでいる子供たちや、ジョギングしている人の姿はあったが、私のすぐそばには誰もいなかった。

気のせいだろうと自分に言い聞かせ、再び散歩を続けることにした。公園の周りを一周し、そろそろ家に帰ろうと、元来た道を戻り始めた。その時、突然、後ろから「カツカツ」と靴の音が聞こえてきた。

振り返ると、またもや誰もいない。心臓が一瞬で高鳴り、背中に冷や汗が流れた。足音は、確かに私のすぐ後ろから聞こえていたはずだ。私は歩く速度を速めたが、その音も同じように速くなっていく。まるで、私を追いかけてくるかのように。

何度も振り返ったが、そこには誰もいなかった。それでも、背後に誰かがいるという感覚は強くなり続け、私はその感覚から逃れることができなかった。足音はますます近づき、今にも肩に手が触れるのではないかという恐怖が襲ってきた。

公園を出て、住宅街へと足を向けるが、足音は止まることなく続いた。焦りと恐怖でパニックに陥りかけた私は、ついに走り出した。全速力で家に向かって駆け出したが、その音は私と同じ速度でついてくる。耳を塞ぎたい衝動に駆られながらも、私はただひたすらに走り続けた。

家が見えてきたとき、ようやく足音は聞こえなくなった。私は玄関に飛び込むようにして入り、鍵をかけた。息を整えながら、窓越しに外を確認したが、そこには誰もいなかった。静まり返った夜の住宅街が広がっているだけだった。

恐怖に震えながらも、自分が過剰に反応しすぎただけだろうと無理に納得させようとしたが、あの足音のリアルさはどうしても忘れることができなかった。

その後、私は夕方の散歩を避けるようになった。どうしても散歩に行きたくなったときは、明るいうちに済ませるようにしていた。あの日の出来事を思い出すたびに、あの「誰もいないはずの追跡者」が再び私の背後に現れるのではないかという恐怖が、今でも心の中に潜んでいる。



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