私たちが「こっくりさん」をしたのは、ある秋の放課後だった。教室には私、サトシ、ユミ、ケンの4人だけが残っていた。サトシが「こっくりさんやってみようよ」と言い出し、他にやることもなかった私たちは、軽い気持ちでその提案に乗った。
紙に「はい」「いいえ」「鳥居」と五十音を書き、真ん中に10円玉を置いた。みんなで指をのせ、軽い緊張感の中で儀式が始まった。
「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいますか?」
サトシが問いかけると、教室は静まり返った。しばらくの間、何も起こらず、私たちはその場にたたずんでいた。ところが、突然10円玉がゆっくりと動き始めた。
「本当に動いた…」とユミが小さな声でつぶやいた。10円玉は「はい」に止まり、私たちは驚きと興奮で次々と質問を重ねた。
「こっくりさん、私たちに何か言いたいことがありますか?」
再び10円玉が動き始め、「あ」「ぶ」「な」「い」と文字を指し示した。その瞬間、全員が息を呑んだ。
「何が危ないの?」とケンが尋ねたが、10円玉は動きを止めたままだった。私たちはその答えを待ったが、10円玉は何も示さなかった。恐怖と不安がじわじわと広がり、私たちは次第に言葉を失っていった。
「もうやめよう」と私は言った。誰も反対することなく、全員が同意した。
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください。」
私たちは手を合わせてそう唱え、10円玉が「鳥居」に戻るのを確認してから、すぐに道具を片付けた。全員がほっとしたような表情を浮かべたが、私たちの心には不安が残っていた。何が「危ない」のか、その意味が全く分からなかったからだ。
その後、私たちは教室を後にし、いつも通りの帰り道を歩いていた。ところが、家の近くに差し掛かった時、ユミが急に立ち止まった。
「ねえ、あの角、いつもと違う気がする…」
彼女が指さした先を見ると、そこには普段見慣れない路地があった。私たちは「いつも通っている道だよ」と言いながらも、その路地に一抹の不安を感じた。誰もがその道を通りたくないという気持ちを抱きながら、あえて話題にしなかった。
それぞれの家に帰ると、特に何も変わったことはなく、いつもの夕方が過ぎていった。しかし、翌日学校に行くと、サトシが青ざめた顔で話しかけてきた。
「昨日の帰り道、あの路地の前で立ち止まらなかった? あそこ、昨夜事故があったらしいんだ」
その言葉に、私たちは全員が凍りついた。こっくりさんの「危ない」という言葉が、あの路地のことを指していたのだろうか。あの日、こっくりさんが何かを警告していたのだと気づいた時、私たちは全員が恐怖で震えた。
それ以来、私たちはこっくりさんを二度とやることはなかった。あの日の警告が、私たちを守ったのかもしれないという思いが、私たちにこっくりさんの力を再認識させた。
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