放課後、私たちは教室に集まって「こっくりさん」を試すことにした。参加したのは私、リョウ、マリ、そしてユウカの4人。リョウがこっくりさんの話を聞いて興味を持ち、どうしてもやってみたいと言い出したのがきっかけだった。
私たちは黒板の前の机に紙と10円玉を用意し、「はい」「いいえ」「鳥居」と五十音を書いた紙を置いた。少し緊張しながらも、全員が10円玉に指を乗せ、こっくりさんを始めた。
「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいますか？」
リョウが問いかけると、教室は静まり返った。窓の外では風が木々を揺らす音が聞こえ、その静寂が私たちの緊張をさらに高めた。しばらくの間、何も起こらなかったが、突然10円玉がゆっくりと動き始めた。
「動いた！」ユウカが驚きの声を上げた。10円玉は「はい」に止まり、私たちは息を飲んだ。
「こっくりさん、ここにいますか？」とマリが尋ねると、10円玉は再び「はい」に動いた。全員が緊張感を抱きながら、その動きを見守った。
次の瞬間、教室の電気が一瞬だけチラついた。全員が一斉に天井を見上げたが、すぐに元の明るさに戻ったため、私たちは何事もなかったかのように再びこっくりさんに集中した。
「こっくりさん、私たちに何か伝えたいことがありますか？」
その質問に対して、10円玉はゆっくりと動き、「は」「や」「く」と指し示した。
「早く…？早く何？」リョウが不安げに言った。その瞬間、教室の窓が突然ガタガタと揺れ始めた。私たちは全員が驚き、10円玉から手を離してしまった。
「風のせいだよね？」とユウカが震える声で言ったが、その言葉が不安を打ち消すことはできなかった。全員が何か異様な気配を感じていたのだ。
リョウが「もうやめよう」と言い出し、私たちはすぐにこっくりさんを終わらせることにした。
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください。」
私たちは声を揃えて唱え、10円玉が「鳥居」に戻るのを確認した。全員がほっとしたのもつかの間、教室の隅で何かが動く気配を感じた。
私は恐る恐るそちらを見たが、何も見えなかった。しかし、その場所に何かがいるような感覚は消えなかった。全員が言葉を失い、教室の不気味な静寂に包まれた。
「帰ろう…」誰かが小さな声で言った。
その後、私たちは教室を飛び出し、一目散に家に帰った。何が起きたのか、誰もはっきりとは説明できなかったが、あの時感じた恐怖と緊張は、今でも鮮明に覚えている。
あの日のこっくりさんが招いた「影」が何だったのかは分からない。ただ、私たちはもう二度とこっくりさんをやろうとは思わなかった。
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