私の通っていた中学校には、屋上にまつわる奇妙な噂があった。昼間は誰もいないはずの屋上に、夜になると白い影が漂っているというのだ。そして、その影を見た者には必ず不吉な出来事が起こると囁かれていた。生徒たちはその噂を恐れ、屋上には近づかないようにしていた。
ある日、放課後の部活が終わった後、私は友人のアキラとユウタと一緒に帰ろうとしていた。外はすっかり暗くなり、学校の廊下にはほとんど人影がなかった。私たちは何気なく屋上の噂について話し始めた。
「お前、あの白い影って本当に見たことあるのか?」アキラがユウタに尋ねた。ユウタは一度噂を聞いてからというもの、興味を持って夜の屋上に登ろうとしたことがあるらしい。
「いや、見たことはないけど、どうせただの噂だろう?」ユウタは笑いながら答えたが、その笑顔には少し不安が混じっていた。
「じゃあ、確かめてみようぜ!」アキラが突然言い出した。
私はすぐに反対した。「やめようよ。もし本当に何かがいたらどうするんだ?」
「怖いのか?」アキラがからかうように言ったが、私たちはなんとなくその場の雰囲気に流され、屋上に行くことになってしまった。
私たちは階段を上り、屋上の扉の前に立った。そこには「立入禁止」の札がかかっていたが、ユウタが「一瞬だけだから」と言って札を外し、鍵をこじ開けた。扉が軋む音を立てて開き、私たちは暗い屋上に足を踏み入れた。
屋上は静まり返り、夜風が冷たく頬を撫でていった。遠くの街の灯りがぼんやりと見える中、私たちは不安と恐怖を感じながら辺りを見回した。しかし、そこには何もなかった。
「やっぱりただの噂じゃないか?」ユウタが言った瞬間だった。
突然、屋上の隅にある小さな物置の横で、何かが動いたのを見た。私たちは一斉にその方向に目を向けたが、そこには誰もいない。だが、次の瞬間、ふと視界の端に白い影が浮かび上がった。
それは、まるで人の形をしたぼんやりとした白い影だった。まるで霧が形をなしたかのように、その影は物置の横からゆっくりとこちらに向かって漂ってきた。
「なんだ、あれ…?」アキラが震える声で呟いた。
私たちはその場から動けず、ただその影を見つめ続けた。影は徐々にこちらに近づいてくる。何の音も立てず、まるで地面から浮いているようだった。
「逃げよう!」ユウタが叫び、私たちは一斉に屋上の扉に向かって駆け出した。心臓が激しく鼓動し、足が震えて思うように動かない中、なんとか扉を開けて階段を駆け下りた。
階段を下りきったところで、私たちはようやく立ち止まり、息を切らして振り返った。そこには何もいなかったが、私たちはまだその恐怖から逃れられなかった。
「やっぱり、ただの噂じゃなかったんだ…」アキラが青ざめた顔で言った。
翌日、学校に行くと、ユウタが高熱で倒れたという知らせがあった。彼は家から一歩も出られず、数日間寝込んでしまったという。さらに、アキラの家でも不幸な出来事が続き、家族全員が体調を崩してしまった。
私自身も、その日以来、夜になると妙な寒気を感じるようになり、眠れない日々が続いた。白い影を見たことで、不吉な出来事が現実に起こり始めたのだ。
あの日、私たちが見たものが何だったのか、今でも分からない。ただ一つ確かなのは、屋上には何かが潜んでいるということだ。学校ではその噂を誰にも話せなかったが、私たちは二度と屋上には近づかないと誓った。
白い影が再び誰かの前に現れる時、その者もまた同じような不吉な運命に見舞われるのだろう。屋上は昼間は静かで平和だが、夜になると決して触れてはならない恐怖が待ち構えている場所なのだ。
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