怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

消えた忘れ物 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私がまだ若手の教師だった頃、不思議な出来事に遭遇したことがあります。怖さというよりも、不可解で不思議な体験で、今でもあの時のことを思い出すと、何だったんだろうと考えてしまいます。

その日はいつもと変わらない日常で、私は授業を終えた後、放課後に生徒たちが教室に忘れていったものを集めるために、学校内を回っていました。生徒たちはよく筆箱やノートを忘れるので、それらを職員室に持ち帰り、翌日に返すことが習慣になっていました。

その日も同じように教室を回っていると、ある教室の机の上に、小さなぬいぐるみが置き忘れてあるのを見つけました。それは、くまのぬいぐるみで、サイズも小さく、手のひらに乗るくらいのものでした。

「こんなかわいいものを忘れていくなんて、どの子だろう?」

私はそのぬいぐるみを手に取り、職員室に持ち帰ることにしました。誰かが翌日に取りに来るだろうと思い、ぬいぐるみを机の上に置いて仕事を続けました。

しかし、翌日になっても、ぬいぐるみの持ち主は現れませんでした。誰かが取りに来るだろうと思っていた私は少し不思議に思い、クラスの生徒たちに「このぬいぐるみを誰かが忘れたんじゃないか」と尋ねましたが、誰も見覚えがないと言います。

「じゃあ、他のクラスの生徒かもしれない」と考え、いくつかのクラスを回ってみましたが、やはり誰もそのぬいぐるみを持っていた覚えがないと言うのです。

結局、ぬいぐるみの持ち主は見つからず、私は職員室に戻ってぬいぐるみをもう一度机の上に置きました。「しばらくここに置いておけば、持ち主が現れるかもしれない」と思い、そのままにしておくことにしました。

ところが、その日の放課後、また教室を回っていた時に、同じぬいぐるみを別の教室で見つけたのです。私は驚いて、そのぬいぐるみを手に取りました。確かに、職員室に置いてきたはずなのに、どうしてここにあるのか全く理解できませんでした。

「どういうことだろう…?」

不思議に思いながらも、私はそのぬいぐるみを持ち帰り、職員室に戻りました。そこで再び机の上に置いたぬいぐるみを見て、驚愕しました。職員室の机の上には、もう一つ同じぬいぐるみが置かれていたのです。

ぬいぐるみが二つに増えていたのです。同じくまのぬいぐるみが、まったく同じ姿で二つ存在していることに、私はただ呆然とするしかありませんでした。

「一体、どうなっているんだ…?」

その夜、私は家に持ち帰って二つのぬいぐるみをじっくり観察しましたが、やはりどちらもまったく同じものでした。奇妙で不可解な状況に戸惑いながらも、翌日、私は再びぬいぐるみを職員室に持って行きました。
職員室につくと机の上に二つのぬいぐるみを置いておきました。

そして、授業が終わり職員室に着いてみると、机の上に置いていたはずのぬいぐるみが、二つとも消えていました。

それ以来、そのぬいぐるみは一度も現れませんでした。ぬいぐるみの持ち主も結局分からず、何が起こったのかも未だに謎のままです。

あのぬいぐるみは、一体どこから現れ、どこへ消えていったのか。あれはただの夢だったのか、それとも何かのいたずらだったのか。今でも、時々そのことを思い出すと、不思議な気持ちになります。

結局、怖い出来事ではありませんでしたが、あのぬいぐるみのことを考えると、現実と幻想の境界が少し曖昧になったような気がします。そして、学校には時折、説明のつかない不思議なことが起こるものだと実感しました。



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