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消えた黒板のメッセージ――夜の学校で起こった不思議な体験 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私が教職について数年目の頃、夜遅くまで学校に残っていた時に体験した、今でも忘れられない不思議な出来事があります。怖さはそれほどないものの、まるで夢の中で起こったような現実感のない体験でした。

その日は、期末テストが近づいており、放課後に試験問題の作成をしていました。学校の仕事は忙しく、夜遅くまで職員室に残ることも珍しくありませんでした。時計が夜の10時を指す頃、ようやく仕事が一段落し、次の日の授業の準備をしようと思い立ちました。

私は翌朝の授業で使うためのメッセージを黒板に書いておこうと、教室に向かいました。誰もいない静かな教室に入ると、いつもと変わらぬ教室の風景が広がっていました。私は黒板に向かい、チョークを手に取って、明日の朝生徒たちに伝える予定のメッセージを書き始めました。

「おはようございます。今日は期末テストに向けての復習をします。しっかり準備してきてくださいね。」

簡単な挨拶と注意事項を書き終え、黒板を見渡して満足感を覚えました。これで翌朝はスムーズに授業を始められるだろうと思い、教室の灯りを消して職員室に戻りました。

職員室に戻ってから、私は他の書類を整理し、最後の確認をしていると、ふと気になってしまいました。あのメッセージ、ちゃんとした言葉遣いだっただろうか、間違いはなかっただろうか、と。

気になってしまった私は、再び教室に行って確認することにしました。おかしいなとは思いましたが、自分でもなぜそこまで気になったのか分かりません。ただ、確かめておきたいという気持ちが強く湧き上がったのです。

再び教室に入ると、そこは先ほどと同じように静かで落ち着いた雰囲気でした。しかし、黒板に目を向けると、私が先ほど書いたはずのメッセージが消えていたのです。

「えっ…?」

私は一瞬、何が起こったのか理解できませんでした。確かに自分で書いたメッセージが、まるで誰かが消したかのようにきれいさっぱりなくなっていたのです。
教室を間違えたのかなと思いましたが、教室も間違えていません。
そして、教室には誰もいないはずで、私はすぐに他の教室や廊下を確認しましたが、人影はありませんでした。

「そんなはずはない…」

私は少し混乱しながらも、もう一度黒板にメッセージを書き直しました。今度はもっと慎重に、しっかりと書き終えた後、再び黒板を確認しました。確かに書いたはずの言葉がしっかりと残っているのを見て、今度こそ大丈夫だろうと思い、教室を出ました。

しかし、職員室に戻ろうと廊下を歩き始めたその瞬間、またもや不安がよぎり、教室に戻って黒板を確認したくなりました。おかしな話ですが、気持ちがどうしても落ち着かず、私は再び教室へ引き返しました。

教室に戻ると、先ほどまで確かに書いてあったメッセージが、再び消えていたのです。

「一体どうなってるんだ…」

私は再び驚愕し、教室の中を見渡しましたが、やはり誰もいない。まるで教室そのものが自分の意思でメッセージを消しているかのような感覚に襲われました。私は恐怖というよりも、ただただ不思議で、訳が分からない気持ちでいっぱいでした。

その時、ふと窓の外を見ると、夜空に薄い霧がかかっているのが見えました。何かに導かれるように、私はもう一度黒板に近づき、チョークを手に取りました。今度は何も書かずに、ただ黒板の前に立ってみたのです。

そして、不意に思い出したのは、自分が子どもだった頃の学校の思い出でした。夜遅くに先生が一人で教室にいる光景を想像し、なんとなくそれを恐ろしく感じていた頃のことを。まるで、あの頃の記憶が呼び覚まされたかのように、黒板が真っ黒なままであることが、少しだけ安心感を与えてくれました。

結局、その夜はもう黒板に何も書かずに、職員室に戻って仕事を終えました。翌朝、教室に入った時には、黒板には何も書かれておらず、生徒たちはいつも通りの朝を迎えていました。

あの夜、黒板に何が起こっていたのか、今でも謎のままです。教室がまるで自分の存在を主張するかのように、私が書いたメッセージを拒んでいたのかもしれません。

この話を同僚にすると、「学校にはそんなことがあるよね」と軽く流されることもありますが、私にとっては忘れられない、不思議で少しだけ現実感のない体験でした。



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