私が高校生だった頃、クラスに一人、目立たないけれど不気味な雰囲気を持つ男子生徒がいました。彼の名前はタカシ。彼はいつも一人で、友達もおらず、話しかけてもまともに返事をすることはなく、クラスの誰からも避けられていました。
ある日、タカシが突然学校に来なくなりました。クラスメイトたちは彼が転校したとか、学校を辞めたとか、いろいろな噂をしていましたが、誰も彼のことを深く気に留めていませんでした。先生も彼の不在について特に触れず、ただ「しばらく休むようだ」と言っただけでした。
しかし、数日後、彼の存在が急にクラスで話題になり始めました。きっかけは、彼の席の近くに座っていたアキラが、突然とてつもない恐怖に襲われたからです。アキラは授業中、タカシがいつも座っていた席で何かを感じたと言いました。
「誰かがずっと俺を見てるんだ…」アキラは蒼白な顔で言いました。最初はみんな彼の冗談だと思い笑っていましたが、アキラの真剣な表情を見て、次第にクラスは不安な雰囲気に包まれていきました。
その後、クラスで奇妙な出来事が相次ぐようになりました。誰も触れていないのに教室のドアが勝手に開いたり閉まったり、授業中に突然電気が消えることが度々起こるようになりました。黒板には誰かが書いたわけでもない文字が浮かび上がり、消えていくという現象も起こりました。
その文字は、誰かが助けを求めるような内容でした。
「助けて…」「ここから出して…」
これらの現象はタカシがいなくなってから始まったもので、クラスメイトたちは次第に彼と何か関係があるのではないかと考え始めました。しかし、誰もそのことを口に出す勇気はありませんでした。
そしてある日、最悪の出来事が起こりました。
放課後、私と何人かの友達が教室に残って雑談をしていた時、突然教室のドアが勢いよく開き、強烈な冷気が流れ込んできました。驚いて振り返ると、ドアの向こうには誰もいません。しかし、その瞬間、私は背筋にゾッとするほどの恐怖を感じました。
突然、教室の照明がチカチカと点滅し始めました。私は立ち上がって友達と一緒に逃げ出そうとしました。しかし、足が凍りついたように動かず、まるで教室に何かに縛られているかのようでした。
その時、教室の後ろの方から、低くてかすれた声が聞こえてきました。
「…俺を忘れるな…」
その声は明らかにタカシのものでした。クラスメイトたちは全員がその声に凍りつき、顔を見合わせました。恐怖で声も出せず、ただその声が消えるのを待つしかありませんでした。
その後、照明が突然元に戻り、教室は静寂に包まれました。私は友達と一緒にすぐに教室を飛び出し、廊下を全力で駆け抜けました。その日以来、クラスメイトたちはタカシの席に近づくことを避け、誰も彼のことを話題にしなくなりました。
しかし、最も恐ろしいのはその後に起こったことです。タカシが学校に来なくなってからしばらくして、クラスの出席簿から彼の名前が消えていました。先生にそのことを尋ねても、「そんな生徒は最初からいなかった」と言われました。
クラスメイトたちは、彼が存在していたことを確かに覚えているはずなのに、次第に彼のことを思い出すのが難しくなっていきました。タカシが一体何者だったのか、彼がどこへ消えたのか、そしてなぜ彼の存在が消えたのか、誰にも分かりません。
今でも、時折思い出すことがあります。タカシとその後の出来事が、ただの幻覚だったのか、それとも本当に何か超自然的な力が働いていたのか。私にはもう分かりません。ただ、あの時の恐怖だけが、今でも私の記憶に鮮明に残っているのです。
あの出来事以来、私はもう二度と学校で何か奇妙なことが起こることを恐れるようになりました。学校という場所が持つ何か不思議な力が、時折現れるのかもしれないと、今でも思っています。
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