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深夜に呼ばれるエレベーター――行き先不明の乗客 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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数年前、私はあるビルの管理人として働いていました。夜勤が多く、深夜の静けさに包まれたビル内を巡回するのが日課でした。そのビルは古く、エレベーターも老朽化していましたが、それでも毎晩しっかりと動いていました。

その夜も、いつもと同じように巡回をしていた時のことです。時計の針が午前2時を指し、ビル内には誰一人いないはずでした。私は警備室に戻ろうとしていたところ、エレベーターの動作音が聞こえてきました。

「こんな時間に誰かいるのか…?」

不審に思い、エレベーターの前に向かいました。エレベーターの表示を見ると、ゆっくりと上昇しているのがわかりました。しかし、そのビルの上層階は全てオフィスで、夜中に使われることはありません。私は少し不安を感じながら、エレベーターがどこに止まるのかを見守りました。

エレベーターは10階で止まりました。そして、ドアが開く音がしましたが、誰も降りてくる様子はありません。私は警備室に戻り、モニターで10階の様子を確認しましたが、やはり誰もいないようでした。

「故障だろうか…?」

私は少し不安になりながらも、そのまま見守ることにしました。エレベーターは再び動き出し、今度は下降し始めました。しかし、次にエレベーターが止まったのは、5階でした。

5階もまた、夜中には誰もいないはずの階です。私はエレベーターの前まで行き、下のボタンを押し、ドアが開くのを待ちました。しかし、ドアが開いてもそこには誰もいません。私は少し躊躇しましたが、エレベーターに乗り込むことにしました。

中は静かで、いつもと変わりませんでした。私は「1階」のボタンを押し、エレベーターが動き出すのを待ちました。ところが、エレベーターは1階には行かず、急に上昇を始めたのです。しかも、私が押した覚えのない「13階」のボタンが光っているのが見えました。

「13階なんて、このビルにはないはずなのに…」

心臓が激しく鼓動し、私は恐怖で体が震え始めました。エレベーターはどんどん上昇し、ありえないはずの「13階」で止まりました。ドアがゆっくりと開き、私は息を呑みました。

そこには、薄暗く荒れ果てた廊下が広がっていました。壁にはひびが入り、床には埃が積もり、まるで何十年も使われていないかのような状態でした。しかし、それよりも恐ろしかったのは、廊下の奥からこちらをじっと見つめる影があったことでした。

「早く閉まれ…」

私は心の中で祈るようにドアの閉まるボタンをおしました。しかし、エレベーターはまるで反応しませんでした。影はゆっくりとこちらに近づいてきました。足音が響き渡り、私は恐怖で動けなくなりました。

突然、エレベーターの照明が消え、完全な暗闇に包まれました。私は息を殺し、何が起こるのか分からないまま、ただ待ち続けました。その時、エレベーター内に何か冷たい風が吹き込んでくるのを感じました。

「乗せて…」

どこからか、かすかな囁き声が聞こえてきました。声は低く、どこか切迫感がありました。私はその声が近づいてくるのを感じ、恐怖で顔を覆いました。何が入ってきたのか分かりませんでしたが、エレベーター内には確かに何かの存在が感じられました。

次の瞬間、エレベーターの照明が再び点灯し、ドアが閉まりました。エレベーターは急降下し、私は恐怖で目を閉じたまま、ただ祈ることしかできませんでした。

やがて、エレベーターは静かに停止し、ドアが開きました。私は震える足で1階に降り立ちました。見慣れたロビーが広がっていましたが、私はその場に立ち尽くし、しばらく動けませんでした。

後日、私は同僚にその話をしましたが、誰も信じてくれませんでした。しかし、それ以来、私は深夜にエレベーターに乗ることを恐れるようになりました。あの「13階」は実在したのか、そしてあの囁き声は一体何だったのか。今でもその答えを見つけることができないまま、ただ恐怖だけが心に残っています。



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