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異世界の果実――夢からの贈り物 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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あの夜、いつもと変わらない日常を過ごし、ベッドに入った私は、すぐに深い眠りに落ちました。特に疲れていたわけでもなく、ただ普通の一日が終わる、そんな平凡な夜でした。

しかし、その夜見た夢は、全く予想もしない不思議なものでした。

夢の中、私は全然知らない場所にいました。目の前には活気にあふれた商店街が広がり、色とりどりの露店が軒を連ねています。街並みはいままで見たことあるようなのですが、どことも違う不思議な街並みでした。ヨーロッパのようでそうではない、アジアのようでアジアでもない。また、時代も全然バラバラのものが一緒に存在しているような印象を受けました。私は、不思議な街並みをみながら、その街を歩いていました。

通りにはたくさんの人々が行き交い、皆楽しそうに買い物をしています。露店には見たことのない商品が並び、どれも興味を引くものばかりでした。カラフルな雑貨、珍しい装飾品、そして何よりも、見たこともないような果物がずらりと並んでいました。

歩いていると、ふとある果物屋の前で足が止まりました。店頭には、鮮やかな色をした果物が山のように積まれています。どれも見たことがない形や色で、少し戸惑いながら見ていると、元気なおばさんが声をかけてきました。

「お嬢さん、試食していきなさいな。新鮮で美味しいよ!」

おばさんは親しげな笑顔で、私に果物を差し出してくれました。それは、鮮やかな紫色をした小さな果物で、見たことのない形をしていました。

「これ、美味しいよう。さ、どうぞ!」

私は少し迷いましたが、差し出された果物をひとつ手に取り、かじってみました。すると、それは今までに味わったことがないほどジューシーで甘く、口の中に広がるフレッシュな風味に驚きました。

「美味しい!なんだか不思議な味ですね!」

そう言うと、おばさんは満足げに笑い、「でしょ?この街でしか手に入らない特別な果物なんだよ」と誇らしげに言いました。

しかし、その時、ふと背後から声がかかりました。

「お嬢さん、少しお時間を。」

振り返ると、警察官のような制服を着た男性が立っていました。彼は真面目な顔をして、私に向かって言いました。

「あなたは、この街の住人ではありませんね。この場所にいてはいけません。元の世界へ戻らなくてはなりません。」

私は驚きながらも、なぜかその言葉に従うしかないような気がしました。彼の言葉に納得しきれないままも、「え、でも…」とつぶやくと、果物屋のおばさんが残念そうに言いました。

「あらあら、あなたは別の世界の人だったのね。そりゃ残念。でも、元の世界じゃ食べられないでしょうから、これを持って行きなさい。」

そう言って、おばさんは見たこともない、まるで宝石のように輝く果物を一つ私に手渡してくれました。手に取ると、冷たくて心地よい感触があり、そのまま持っていても甘い香りが漂ってきます。

「さようなら。また会うことはできないと思うけど、元気でね。」

そう言われて、私も「ありがとう」とだけ言うと、警察官のような男性に促され、私はその街を後にしました。男性は静かに言いました。

「二度とこちらの世界に来てはいけませんよ。」

そして、目が覚めました。

「…夢?」

私は自分のベッドに戻っていることに気づき、胸を撫で下ろしました。夢だったんだ、とほっとした気持ちでベッドから起き上がろうとしましたが、その瞬間、手の中に何かを握っている感覚があることに気づきました。

「まさか…」

私はゆっくりと手を開きました。そこには、夢の中でおばさんが手渡してくれたあの果物が現実に握られていたのです。現実には存在しないはずの、鮮やかに輝く果物が、手の中で甘い香りを放っていました。

驚きながらも、私はその果物をキッチンに持っていき、恐る恐る包丁で切ってみました。中は瑞々しく、鮮やかな色の果肉が詰まっていました。一口かじると、夢の中で味わったのと全く同じ、ジューシーで甘い味が広がりました。

「こんなこと…あり得るの?」

私はその果物をすべて食べ終わり、甘い余韻に浸りながらも、あの夢が現実だったのではないかという不思議な感覚に囚われました。

あの街、あのおばさん、そして警察官のような男性。二度と行けないと言われたあの場所が、実際にどこかで存在しているのかもしれないという思いが、今でも私の胸に残っています。

夢だったはずなのに、現実に存在するその果物。夢と現実の境界が曖昧になり、私は今もその日のことを思い返しては、不思議な気持ちに包まれています。

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