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夜の倉庫――用務員が見た恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は学校の用務員として長年働いていますが、あの夜ほど恐ろしい体験をしたことはありません。どんなに年月が経とうと、あの日の記憶は決して消えることがないでしょう。

その日は、いつもより少し遅くまで仕事がありました。校内の設備点検が長引いて、夜の9時を過ぎても校舎に残っていました。生徒や先生たちはとうに帰り、校内は静まり返り、廊下には私の足音だけが響いていました。

その日、最後に点検を終えたのは、体育館の横にある古い倉庫でした。ここはもう長い間使われていない場所で、古い運動器具や壊れた備品がしまわれているだけの場所でしたが、定期的に確認するよう言われていたので、仕方なく毎回見回りに行っています。

古い倉庫の鍵を開け、中に入ると、湿った空気と独特のカビ臭さが鼻を突きました。懐中電灯を片手に、使われなくなった運動器具の間を歩きながら、異常がないか確認していました。古いバスケットボールや、サビついたトロフィー、壊れた椅子が無造作に積み上げられているだけで、特に変わったことはありません。

「早く終わらせて帰ろう…」

そう思いながら、倉庫の奥へ進んでいくと、背後で「ガタン」と何かが倒れる音がしました。

「……風で何か倒れたのか?」

私は驚きつつも、特に気にせず作業を続けようとしましたが、次の瞬間――倉庫の中で、何かが動く気配を感じました。

「誰か…いるのか?」

私は声を上げましたが、返事はありません。懐中電灯の光を周囲に向けましたが、物が散乱しているだけで、誰もいない。それでも、妙な気配が肌にまとわりつくようで、落ち着かない。

私は少し動揺しつつ、倉庫を出ようとしましたが、足がどうしても前に進みません。まるで、何かに見られているような――そんな嫌な感覚が全身を覆いました。再び背後で物音がして、振り返ると、古い棚にかけられた鏡に、何かが映り込んでいるのが見えました。

「……誰かが、いる…?」

その鏡には、はっきりと人影が映っていました。だが、その姿は、明らかにおかしい。人の形をしているはずなのに、顔がない――いや、顔があるべき場所が真っ黒に塗りつぶされているのです。まるで黒い穴がぽっかりと開いたように、何も映し出されていない。

恐怖で全身が凍りつきました。あの人影が、鏡の中でじっとこちらを見ている。顔がないのに、確かに見られている感覚がありました。そして、その黒い空間から何かがじわじわと近づいてくるような気配がして、私は足がすくんで動けなくなりました。

「これは…まずい…」

逃げなければ――そう思いましたが、足が地面に張り付いているように動かない。懐中電灯の光を強く握りしめ、必死に後ろを振り返りましたが、そこには何もありません。ただ、鏡に映った黒い影だけが、ゆっくりとこちらに近づいてくるのが見える。

その時――鏡の中の影が、いきなり動き出しました。

「ゴンッ…!」

突然、鏡が大きく音を立てて揺れました。倉庫の中で他の物もガタガタと鳴り響き、まるで何か巨大な力が内部を揺るがしているかのようでした。私は恐怖のあまり動けなくなり、その場で立ち尽くしていました。

そして、鏡の中の影が私に向かって手を伸ばしてきました。黒い手が、鏡の中から現実に飛び出し、こちらに触れようとしている――その瞬間、全身に冷たい感覚が広がりました。

「これは…本当にやばい…!」

そう感じた瞬間、体が無意識に反応し、私は懐中電灯を投げ出して全力で倉庫の外に向かって走り出しました。背後で物が崩れる音が聞こえましたが、振り返る勇気はありませんでした。

倉庫の扉を開け放ち、外に飛び出すと、冷たい夜風が一気に吹き抜けました。私は息を切らしながら、心臓の鼓動を抑えることができませんでした。

「一体、何だったんだ…?」

全身が震え、冷や汗が流れ続けました。背後の倉庫を振り返ると、静かに閉まった扉の向こうには、何事もなかったかのように闇が広がっているだけでした。しかし、私は二度とあの倉庫に近づきたくないという強烈な恐怖を感じました。

あの日以来、夜遅くに倉庫へ行くことはありません。あの黒い影が何だったのか、なぜ私に近づいてきたのか、今でも分かりません。ただ一つだけ分かっていることは――学校の夜の倉庫には、決して触れてはならない何かが潜んでいるということです。

その存在が、今もあの場所で、誰かを待っているかもしれないと考えると、背筋が凍りつく思いです。

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