私は、長年この学校の用務員として働いています。日々の掃除や備品の管理が主な仕事ですが、学校という場所は、生徒たちがいなくなると静まり返り、時折、奇妙なことが起こるものです。大したことではないのですが、今でもちょっとだけ不思議に思っている話を一つしましょう。
学校の掃除道具は私がすべて管理しています。特にホウキやチリトリ、モップなんかは、毎日使うものなので、常に点検し、古くなったら買い替えています。ホウキも、だいたい使い込んでくると、毛先がすり減ってきて、掃除がしにくくなるので、新しいものと交換するんです。
でも、ある日、不思議なことが起こりました。
その日は、いつものように倉庫にある掃除用具の点検をしていました。すると、一本のホウキが妙に古びているのに気づいたんです。毛先が擦り切れてボロボロで、柄の部分もすっかり手垢がついて黒ずんでいました。
「ああ、これはもう買い替え時だな」
そう思って、私はそのホウキをゴミ袋に入れ、倉庫の隅に置きました。新しいホウキも準備して、翌日から使えるようにしておきました。
ところが、翌日、また倉庫に行ってみると、ゴミ袋に入れたはずの古いホウキが、元の場所に戻っているんです。最初は「あれ、間違えて捨てなかったのかな?」と思いました。もしかして、自分が勘違いしたのかと思い、再びその古いホウキをゴミ袋に入れて、今度こそ間違いないように処分しました。
しかし、次の日――また同じホウキが倉庫の棚に戻っていました。
「おかしいな…」
私はそのホウキを手に取り、再びゴミ袋に入れました。誰かが間違えて戻したのかもしれないと思い、念のために袋の口をしっかりと結び、廃棄場所に持っていきました。これでさすがにもう大丈夫だろうと思いました。
ところが、次の日の朝、やはりその古いホウキが倉庫の棚に戻っているんです。まるで何事もなかったかのように、きれいに並んでいるんです。
「これは、さすがにおかしい…」
気味が悪くなり、私は誰かがいたずらでもしているのかと思い、他の職員に聞いてみました。しかし、誰もそのホウキに触った覚えはないと言います。ホウキが勝手に倉庫に戻ってくるわけがない――そう思っても、現実に何度も同じことが繰り返される。
そのホウキは、結局、何度捨てようとしても、必ず翌日には倉庫に戻っているんです。しかも、少しずつ毛先が元のように戻っているように見えました。最初は擦り切れてボロボロだったのが、いつの間にか少しずつきれいになっていっているんです。
「これは、もう手を出さない方がいいかもしれない…」
私はそう思い、そのホウキを捨てるのをやめて、そのまま倉庫に置いておくことにしました。不思議なことに、それ以来、そのホウキはいつまでも古びることなく、何年もそのまま使える状態であり続けています。
他のホウキは数年でダメになって買い替えが必要なのに、そのホウキだけは、なぜかずっと現役で、少し手入れすれば、またきれいに掃除ができるようになるんです。
いまだにそのホウキがどうしてあんな風に戻ってくるのか、謎のままです。でも、特に悪いことが起こるわけでもないので、今では学校の「不思議なホウキ」としてちょっとした話題になっています。
もし、誰かがこの謎を解いてくれるなら、ぜひ教えてほしいんですがね。まあ、それがなくても、私はこのホウキを大切に使い続けるつもりです。
用務員さんは勇者じゃありませんので 1 (MFブックス) [ 棚花 尋平 ] 価格:1320円 |
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40%ポイント還元中
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |