怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

夕暮れのバスで見た風景 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、いつもの会社帰りのことだった。まだ日は完全に沈んでいない夕方で、空はオレンジ色に染まり始めていた。仕事が早く終わったので、久しぶりに明るい時間帯に帰れることを嬉しく思いながら、バス停に向かっていた。

バスがやってくると、僕は乗り込んで、窓際の席に座った。車内には数人の乗客がちらほら座っていて、皆それぞれに静かに過ごしていた。スマホを見ている人、景色をぼんやり眺めている人、うつらうつらしている人など。僕は仕事の疲れを感じながらも、窓の外に広がる夕暮れの風景を眺めていた。

バスはゆっくりといつもの道を走っていた。オレンジ色に染まった空が徐々に深い青に変わっていくのを見ながら、頭を窓に預けてぼんやりと過ごしていた。

ところが、ふと目に入った風景に、違和感を覚えた。

バスはちょうどいつもの商店街を通り抜けるはずのタイミングだったが、窓の外には見慣れない景色が広がっていた。いつもはスーパーやコンビニが並ぶ通りのはずなのに、古びた木造の家や、ずっと閉まったままのシャッターが目立つ、まるでどこか古い町並みのような風景に変わっていたのだ。

「え?こんな場所、通ったことあったっけ?」

僕は疑問に思い、顔を上げて周りを見渡したが、他の乗客は特に気にしている様子はなかった。皆、黙々と自分の時間を過ごしている。僕は少し気味が悪くなり、再び窓の外に視線を戻した。

バスはそのまま進み、さらに見慣れない風景が続いていった。道沿いには朽ち果てたような家屋が並び、人の気配がまったくなかった。夕暮れの光が不気味に照らし出すその風景は、まるで時間が止まってしまったかのような場所に感じられた。

さらに奇妙だったのは、そこに立っている人々の姿だった。ポツポツと古い家の前や道の端に、何人かの人影が見えたのだ。彼らはじっとこちらを見つめているようだったが、動かず、ただ立っているだけ。彼らの表情は見えなかったが、その存在感はどこか異様だった。

「誰か…いるのか?」

そう思いながらも、僕は不安な気持ちを振り払おうとした。バスは何もなかったかのようにその場所を通り過ぎていく。しかし、その人々の姿が目に焼き付いて離れなかった。

「いつも通る道なのに、こんな風景、見たことない」

次の停留所でバスが停まると、僕は降りようか迷った。だが、降りるべき場所ではない気がして、そのままバスに留まることにした。周りの乗客たちは変わらず静かで、誰一人としてこの異様な状況に気づいていないようだった。

そのままバスは進んでいったが、次に窓の外に広がったのは、さらに奇妙な光景だった。広がる田畑の中に、ぽつんと古いバス停が立っていた。そのバス停には、一人の老人が座っていた。背中を丸め、古びた帽子を深くかぶり、杖を手にしている。バスが近づくと、ゆっくりと顔を上げた。

その瞬間、全身に冷たい汗が流れた。

老人の顔は、どこか現実感がないほどに青白く、目の奥が暗く沈んでいた。僕は瞬時に視線をそらそうとしたが、どうしてもその姿から目が離せなかった。老人はバスに乗る様子もなく、ただこちらをじっと見つめている。

「…何だ、あの人…?」

バスが通り過ぎるまで、老人の視線は僕を追い続けていた。胸の奥に不安が広がり、心臓がバクバクと鼓動を打ち始めた。バスは再び見知らぬ道を進み始め、気づけば周りはすっかり夜の闇に包まれていた。

次の停留所で、僕は堪えきれずにバスを降りることにした。降りた瞬間、冷たい風が吹き抜け、背中に寒気が走った。バスは何事もなかったかのように走り去り、僕はその場に取り残された。
ふと顔をあげると、まだ日が沈む前の少し明るい夕方だった、停留所は自宅最寄の停留所だった。
それを見ると少し気持ちが落ち着き安堵した。

しかし、あの時見た風景は、今でも現実だったのかどうかわからない。ただ、いつも通るはずの道がまったく違うものに見えたのは確かだ。家に帰り、何度も地図を見てみたが、あの古びた町並みや田畑が広がる道の存在を確認することはできなかった。

あの日、僕が見たバスの窓の外の風景は、何だったのだろう。日が沈む前の、まだ明るい時間帯だったのに、僕はどこか異世界に迷い込んでしまったのかもしれない。その光景が目に焼き付き、私は思わず震えた。



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