時間を超えるカメラ：過去の出来事を写真に収めるカメラの秘密　怖い話　奇妙な話　不思議な話　短編集

ある写真家の男性が、とあるアンティークショップで手に入れた古いカメラにまつわる奇妙な体験を語っています。彼はもともとヴィンテージ品に興味があり、そのカメラもインテリアとして購入しただけでした。見た目はどこにでもある古いフィルムカメラで、特別な装飾や機能はありません。棚に飾っていたそのカメラを見ているうちに、試しに一度撮影してみようという気になり、フィルムを入れて何枚か写真を撮りました。

その後、現像された写真を見た彼は、何かが間違っていることに気づきます。撮った場所や被写体は確かに現在の街並みや風景なのですが、写っている人物や建物はどこか時代錯誤なものでした。例えば、街角で立っていた男性が明らかに古い服装をしており、現代には存在しないような看板が背景に映り込んでいたのです。

不思議に思った彼は、さらにいくつかの場所で写真を撮り続けました。すると、過去の出来事や失われたはずの建物、さらには自分の知らない古い街並みが次々と写真に収められていきました。彼が調べたところ、その写っている風景はすべて数十年前、あるいはそれ以上の昔のものだったことが判明しました。

特に印象的だったのは、彼が訪れたある廃墟となった工場で撮影した写真です。現実には朽ち果てたその工場が、写真の中では稼働中で、当時の労働者たちが働いている様子が鮮明に映し出されていました。写真の中で微笑んでいる人物は、まるでカメラに向かって挨拶しているかのように感じられ、背筋が凍るような思いをしたといいます。

この現象がただの偶然やカメラの故障ではないと確信した彼は、さらに興味を持ってそのカメラの背景を調べ始めました。すると、そのカメラはかつて有名な写真家が所有していたもので、その写真家は生涯をかけて「失われた時代を捉えること」に情熱を注いでいたという記録が見つかりました。奇妙なことに、その写真家もこのカメラを使ってから不可解な写真を撮り続けた末、突然姿を消してしまったというのです。

写真家の男性はその後、写真を撮ることをやめ、カメラを封印することにしました。過去を覗き見ることができるという能力は、魅力的でありながらもどこか危険なものであると感じたからです。現在、そのカメラは彼の自宅の奥深くにしまい込まれているとのことですが、彼は今でも、そのカメラが時空を超える力を持っているのではないかと考えています。

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