私は、友人の健太と一緒に心霊スポット巡りをよくしていました。健太が「心霊スポットで写真を撮ると、何か写るかもしれない」という話を聞いてから、どこかスリルを楽しみながら写真を撮ることが定番になっていました。
その夜、私たちは地元でも特に有名な「〇〇神社」に行くことになりました。そこは山の中にあり、長い石段を登った先にある古い神社です。地元の人の話では、かつて自殺者が多く出た場所だとか、失踪事件があったとか、さまざまな怖い噂が絶えない場所でした。何度も訪れたことのある私たちですが、その日は特別に「何かを撮りたい」という思いが強く、インスタントカメラを持参していました。
夜の〇〇神社は、昼間の姿とはまったく違っていました。石段を登る途中、足元を照らす街灯もなく、月明かりがかろうじて道を照らすだけで、風が木々を揺らす音が静寂を破るたびに、不気味さが増していきます。健太も私も、内心少し怖くなりながらも、お互いを励まし合いながら神社へ向かいました。
やっとのことで石段を登り切り、神社の境内に到着すると、息が凍るような冷たい空気に包まれているのが分かりました。誰もいないはずなのに、何かの気配が背後から感じられるような妙な感覚。健太が「ここで写真を撮ろう」と言い出し、私は持参したインスタントカメラを取り出しました。
境内の正面に立つ古びた鳥居と、その奥にある廃れた社殿を撮影しました。フラッシュが境内を一瞬明るく照らし、その後すぐに元の静けさに戻りました。写真がすぐに現像されていくインスタントカメラの特徴もあって、その場でどんな写真が撮れたのか確認できるのが、私たちにとっては興味の一部でもありました。
最初に撮った1枚目の写真には、何も不思議なものは映っていませんでした。古びた社殿と、鳥居の陰影がぼんやりと映るだけ。次に撮ったのは、神社の横にある石像の写真でした。シャッターを押し、また現像された写真を確認すると、今度は妙な違和感がありました。
石像の隣に、誰もいないはずの場所に、ぼんやりとした白い影のようなものが写り込んでいたのです。私たちは顔を見合わせ、冗談混じりに「霊かな?」と言いながら、さらに神社の奥の暗がりを撮影することにしました。
次の写真が現像された時、私たちは完全に凍りつきました。今度は、白い影ではなく、明らかに「人の顔」が写り込んでいたのです。それも、明瞭な表情のない無表情の顔が、社殿の扉のすぐ横に浮かんでいました。私はその写真を見た瞬間、血の気が引き、言葉を失いました。健太もまた顔色を失い、写真を見つめたまま動けなくなっていました。
「もう帰ろう」と健太が震える声で言いました。私もそれに同意し、急いでカメラをバッグにしまい、神社を後にしました。背中には常に誰かがついてきているような気配を感じました。急いで石段を駆け下りる途中、振り返る勇気すらありませんでした。風がざわめく音が、まるで誰かが近くで囁いているかのように耳に響いて、恐怖がどんどん募っていきました。
車に戻り、ドアを閉めた瞬間、二人とも無言のまましばらく息を整えました。健太がふと「もう一度写真を見てみよう」と言い出し、私は震える手でカメラのシャッターを外に向けておしました。写真がすぐに現像されます。
そこにあったのは、さらなる恐怖でした。最後に撮った写真には、無表情な顔だけでなく、まるでその顔がこちらに迫ってくるように、全身がうっすらと写り込んでいたのです。影のようなその存在は、私たちをじっと見つめているように感じられました。
それからというもの、私は心霊スポットには二度と行かないと誓いました。あの夜に撮影したインスタントカメラの写真は、すぐに処分しましたが、心の中に残った恐怖は消えません。あの場所で見たもの、撮ったものは、本当にこの世のものではなかったと今でも思っています。
あのインスタントカメラが捉えたのは、ただの影や光の加減ではなく、確かに「何か」がそこに存在していた証拠だったのです。
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