ある日、私は大学時代からの友人である直樹と一緒に、郊外にある湖のほとりでバーベキューをすることにした。静かで美しい景色が広がり、都会の喧騒から離れてリフレッシュできる場所だった。天気も良く、湖面がきらめき、風も心地よかった。
その日は特に何か予定があったわけではなく、ただ直樹と二人でのんびり過ごすことが目的だった。私たちは買い出しを済ませて、湖畔にシートを敷き、食材を焼きながらお互いの近況を話していた。スマホで写真を撮りながら、リラックスした時間を楽しんでいた。
バーベキューが終わった後、湖畔を少し歩こうという話になり、夕方近くの黄金色に染まる風景を背景に、私たちは何気なくお互いの写真を撮り合った。特に何も考えず、湖と森を背景に、直樹が湖を眺めている後ろ姿を撮影した。その時は、まさかそれが後に恐ろしい出来事の始まりになるとは思いもよらなかった。
夜になり、私たちはそれぞれの家に帰った。自宅に着いてから、スマホでその日撮った写真を見返していると、何枚かは特にきれいに撮れていた。直樹の後ろ姿も含めて、何気ない一日を写真に収められたことに満足していた。
しかし、1枚の写真を見た瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われた。私はスマホの画面を見つめながら、心臓がバクバクと早鐘を打つのを感じた。
それは、直樹の背中に「何か」が写っている写真だった。湖のほとりで彼の後ろ姿を撮った写真に、彼の背中のすぐ上に不気味な「子どもの顔」が浮かんでいたのだ。髪が乱れ、目が大きく見開かれている。
「なんだこれ…?」私は、あまりの異様さにスマホを持つ手が震えた。
子どもの顔は、明らかに私たちがそこにいた時にはいなかった。湖畔には人影もなく、私たち二人だけだったはずだ。それなのに、写真の中では直樹の背中にしっかりとその顔が映り込んでいた。髪の毛が乱れ、顔は不気味なほどに無表情で、何かを訴えているような目つきをしていた。
恐怖で息が詰まるような感覚に陥り、すぐに直樹に電話をかけた。
「直樹、今すぐ写真を送るから見てくれ! なんか変なものが写ってるんだ!」私はパニック寸前の声で話した。直樹は何事かと驚いていたが、写真を送ると数秒の沈黙の後、彼から電話が返ってきた。
「なんだこれ…本当に誰だよ、これ? 俺たち以外に誰もいなかったよな?しかも顔だけって」直樹の声も明らかに震えていた。
私たちはしばらく言葉を失ったまま、電話越しにその写真のことを話し続けた。顔は子どもらしいが、その表情は異常で、人間らしい温かさが一切感じられない。どう見ても、普通の子どもではなかった。
「なあ、これ、消した方がいいんじゃないか?」直樹が提案したが、私もすぐに同意できなかった。なぜか、写真を消すことができない気がしたのだ。
「とにかく落ち着こう。消すのは後でもいい。まずはもう少し考えよう」そう言いながらも、私の中での恐怖は増すばかりだった。
直樹と電話を切り、再びその写真を確認した。子どもの顔はじっとこちらを見つめている。その視線に耐えられず、画面を閉じようとしたその時だった。画面から、何とも言えない不気味な音が漏れ出した。
「ロエェ……ダゾラ……グロゴ……」
まるで空気をかすめるような、低くかすれた囁き声だった。私は一瞬何が起こったのか理解できず、恐怖で身体が硬直した。スマホを見つめると、子どもの顔がわずかに動いているように見えた。目がゆっくりと動き、口が微妙に開きながら、再び同じ声で囁いていた。
「ドグゥ……ロガラァ……ブレェ……」
言葉にならない恐怖に襲われ、私はスマホを放り出しそうになったが、必死に平静を保とうとした。これが現実なのか、ただの錯覚なのか、頭の中が混乱していた。しかし、その囁きは止まらなかった。
「直樹…!」私は叫びながら、再び彼に電話をかけた。
電話が繋がった瞬間、スマホから聞こえていた囁き声はピタリと止み、写真の中の顔も再び静止していた。まるで何事もなかったかのように、写真の中の不気味な顔は再びじっとしたままこちらを見つめていた。
「おい、どうしたんだよ?」直樹が心配そうに言ったが、私は混乱したまま、ただ「いや…なんでもない。今は大丈夫」と答えるしかなかった。
その後、私たちは何度かその写真の話題をしたが、結局、二人ともあの顔の正体について考えることは避けるようになった。あの時の囁き声も、写真に映り込んだ子どもの顔も、まるで現実ではなかったかのように思えるが、確かにそれは存在した。
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