怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

不思議なウサギとの出会いがもたらした小さな幸せの物語 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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秋の穏やかな日差しが車のフロントガラスに差し込む。主人公の健太は、少し遠出をして買い物に出かけていた。目的地のスーパーまではまだ距離があるが、道中のドライブは気持ちが良かった。いつもは通らないこの道を選んだのも、ただ気まぐれだ。しかし、そんな健太の目に、不意に小さなペットショップの看板が映り込んだ。

「こんなところにペットショップなんてあったかな…」

健太は特に動物を飼おうと思っていたわけではない。ペットに対して強い興味があるわけでもない。だが、その小さな店構えに何か引き寄せられるものを感じ、ふと車を止める。

ペットショップのドアを開けると、ベルがカラン、と小さく鳴る。店内は意外にもこぢんまりとしていて、犬や猫、鳥、そしてウサギやハムスターなどの小動物が静かに展示されていた。飼い主を待つ動物たちがガラスの向こうで健太を見つめている。

「こんにちは、どうぞごゆっくり」

店主らしき年配の女性が優しく声をかける。健太は軽く会釈をしながら、特に何を探すでもなく、店内を歩き回る。小鳥が軽くさえずり、犬たちは無邪気に尻尾を振っている。そんな中で、健太の視線は一羽のウサギに吸い寄せられた。

そのウサギは、他のウサギたちよりも少し大きく、ふわふわとした純白の毛に包まれていた。黒く大きな目でじっとこちらを見つめている。ウサギのケージには値札が貼られており、他のウサギたちと比べて少し高価な値段がつけられている。

「このウサギ、ちょっと高いな…」と心の中でつぶやきながら、なぜかそのウサギから目が離せない。何か、ただのウサギとは違う、不思議な引力を感じた。

「その子、気に入りましたか?」

店主が声をかける。健太は少し驚きつつも、「いや、特に買う気はないんですけど…」と曖昧な返事をした。

「触ってみますか?とてもおとなしくていい子ですよ」

そう勧められ、健太はためらいながらもウサギを抱かせてもらうことにした。店主がケージを開け、ウサギをそっと差し出す。健太の手にふわりと収まったそのウサギは、思ったよりも軽く、温かかった。大きな目で健太を見上げ、その姿は愛らしいという言葉では表せないほどの魅力を放っていた。

「本当に、いい子だな…」

ウサギは健太の腕の中で静かに身を委ね、全く暴れる様子もない。まるで最初から自分の飼い主であるかのように、信頼を寄せているようだった。その瞬間、健太は不思議な感覚に包まれた。なぜか、このウサギを家に連れて帰りたい、そんな衝動が湧き上がってきたのだ。

「…この子、ください」

自分でも驚くような言葉が口から出ていた。特にペットを飼おうという計画もなく、何も準備していなかったのに、健太はその場でウサギを購入することを即決していた。

新しい家族との生活

ウサギを連れて家に戻った健太は、少し不安を感じていた。ウサギの飼い方もよくわからないし、何より一人暮らしでペットと共に生活するのは初めてだった。しかし、ウサギとの生活は予想以上に穏やかで心地よいものだった。

ウサギには「ミルク」と名付けた。その真っ白な毛並みが、ミルクのように柔らかで美しかったからだ。

ある日、健太が仕事から帰ると、どこか疲れた表情をしていた。仕事でミスをしてしまい、上司に叱責されたことが頭にこびりついていた。家に帰っても何もする気が起きず、ソファに倒れ込むように横になる。そんな健太に気づいたミルクは、静かに彼の膝の上に乗ってきた。

「お前…何してるんだよ」

ミルクはただそこに座り、じっと健太を見つめているだけだった。しかし、その視線には不思議な力があった。健太はふと、心が軽くなるのを感じた。何も特別なことは起きていない。けれど、ミルクの存在そのものが、彼の心の中に安らぎをもたらしていた。

それ以来、ミルクは健太のそばにいるだけで、少しずつ彼の生活に小さな幸せを運んでくれるようになった。

朝、出勤前にミルクに餌をあげると、そのおかげで急いでいた気持ちが落ち着き、余裕を持って一日を始めることができる。仕事から疲れて帰ると、ミルクが近寄ってきてその白い毛を撫でるだけで、心の疲れがふっと和らぐ。

さらに、ある日健太が少し体調を崩した時、ミルクは健太のそばから離れようとしなかった。いつも通りの可愛らしい仕草で、健太の気分を少しずつ明るくしてくれた。体調が回復するたび、ミルクの存在がどれだけ自分にとって大切なものになっているかを実感した。

ささやかな幸せ

ミルクは特別な魔法を持っているわけではなかった。ただ、その存在自体が、健太にとってささやかながらも確かな幸せを届けてくれていた。

「ミルクがいてくれて、本当に良かったな」

健太はそうつぶやきながら、いつものようにミルクの毛を撫でた。ウサギは何も答えない。ただ静かに、健太の膝の上で目を細めていた。

健太の生活は、大きく変わったわけではない。仕事も忙しいし、嫌なことだって時にはある。しかし、ミルクがいてくれるだけで、彼の世界は少しだけ優しくなっていた。

そのささやかな幸せが、彼の心に大きな影響を与えていることを、健太はもう知っていた。ミルクとの穏やかな日々が、健太にとってかけがえのないものとなっていた。

そして、今日もミルクは健太のそばにいて、その白い毛をふわりと揺らしている。

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