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満面の笑みで近づいてくる女の正体は? 夜道で起こった恐怖体験 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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深夜、仕事の飲み会が終わり、僕は一人で家に向かって歩いていた。街灯の少ない細い道を通るのはあまり気乗りしなかったが、疲れていたし、近道だったので早く帰りたかった。

その道は昔から地元の人間でもあまり通らない裏路地だ。薄暗い道を歩いていると、ふと背後に人の気配を感じた。振り返ると、少し離れたところに女性が一人立っていた。長い髪を持つその女性は、なぜかじっと僕を見つめていた。そして、彼女の顔には不自然なほどの満面の笑みが浮かんでいた。

その笑顔があまりに異様だったため、一瞬全身に寒気が走ったが、酔いのせいだろうと思い、早足でその場を離れようとした。だが、背後から足音が聞こえた。振り返ると、彼女はまだ笑顔のまま、こちらに向かってゆっくりと歩いてきていた。

「気のせいか…」

自分にそう言い聞かせながら再び前を向き、早足で歩き続けた。しかし、その足音は次第に大きくなり、次第に近づいてきているのがわかる。心臓が鼓動を早め、冷や汗が額ににじんできた。振り返ると、その女は明らかに距離を詰めていた。そしてまだ、笑顔のままだ。

「やばい…」

恐怖に駆られ、僕は思わず全力で走り出した。酔いも一気に覚め、ただただ逃げた。だが、振り返る勇気もなく走り続けたものの、なぜか彼女の足音だけがずっと後ろからついてくる気がした。追い詰められたような気分で、ようやく明るい大通りに出たとき、足音は突然止んだ。

振り返ると、そこにはもう誰もいなかった。安堵のため息をつき、ほっとしたが、全身は冷や汗でびっしょりだった。

しかし、それからというもの、僕の生活は変わってしまった。夜道を歩くたびに、あの満面の笑みの女がどこかに現れるのではないかという恐怖が拭いきれない。電車の窓、街のショーウィンドウ、ふと目にした鏡…そのどこかに、あの笑顔が映り込んでいる気がしてならないのだ。

彼女は、まだ僕を追ってきているのだろうか。それとも、次に現れるのは別の誰かの前なのか──。



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