怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

赤い霧の街 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その日はいつもと違う帰り道を選んだ。特に理由はなかったが、ふと目に入った細い路地に引き寄せられるように足が向いていた。普段は通らない道。誰も歩いていないし、周囲は静まり返っている。それでも、なぜか不安は感じなかった。

路地を進むうちに、視界がぼんやりと赤みを帯びてきた。最初は夕日のせいかと思っていたが、やがてそれが普通の夕焼けではないことに気づいた。空が、街が、全てが赤い霧に包まれていたのだ。

「なんだこれ…?」

辺りを見回すと、いつの間にか知っている街並みとは異なる不気味な風景が広がっていた。建物は歪み、路地はどこまでも続いているように見える。人の気配はない。まるで別の世界に迷い込んでしまったような感覚に襲われた。

引き返そうと振り返ると、いつの間にか来た道が消えている。背後には壁がそそり立っており、まるで逃げ場を失ったかのようだった。焦りが胸にこみ上げ、足早に歩き出すが、どこへ行っても赤い霧は濃くなるばかり。目の前の道が次第に見えづらくなっていく。

そのとき、遠くから「カサッ…カサッ…」という音が聞こえた。何かが動いている。振り向くと、霧の中から何かの影がぼんやりと見えた。人のようだが、異様に背が高い。ゆっくりとこちらに近づいてくる。

「誰か…ですか?」

恐る恐る声をかけてみたが、返事はない。代わりに、その影はさらに近づいてきて、ぼんやりとした輪郭が徐々に明確になっていく。人間の形をしているが、何かがおかしい。手足が不自然に長く、体は骨のように痩せ細っている。顔は霧に隠れてよく見えないが、こちらをじっと見つめているのがわかる。

「まずい…」

本能的にそう感じ、慌てて逃げ出した。だが、どこへ走っても赤い霧が視界を覆い、出口は見えない。振り返ると、その異形の者は速さを増し、静かに、しかし確実にこちらへと迫ってきていた。

心臓が激しく鼓動し、足が震える。何とかして逃げ道を見つけようと、角を曲がるたびに違う路地が現れ、迷路のように入り組んでいる。息が切れ、疲労が全身に広がるが、立ち止まるわけにはいかない。

やがて、前方に一軒の家が見えた。古びた家だったが、今の状況では唯一の避難場所に思えた。扉を勢いよく開け、中に飛び込む。内部は薄暗く、家具は埃をかぶり、誰も住んでいないようだった。

しばらく息を潜め、物陰に隠れて様子をうかがう。しかし、あの異形の者は家の外には来なかった。ほっとした瞬間、背後で「ギィィ…」と床が軋む音がした。

「誰かいるのか?」

恐怖に駆られ、背中に冷たい汗が流れる。振り向くと、家の中にあった鏡が静かに揺れている。その鏡には、自分の背後に映る何かの姿がぼんやりと映し出されていた。異形の者とは違う、明らかに人間の姿をした影が鏡の中に映り込んでいる。

振り返っても、そこには誰もいない。それでも、鏡の中の影は僕に向かってゆっくりと歩み寄ってくる。その影の姿は徐々に鮮明になり、目が合った瞬間、その口が大きく裂け、耳元で囁くような声が響いた。

「帰れないよ…」

その声は、確実に僕を狙っていた。鏡の中の影が現実に滲み出してくるように、手がこちらに伸びてきた瞬間、僕は恐怖のあまり全力で家を飛び出した。

走る。ひたすら走る。気がつけば、いつの間にか赤い霧が薄れ、街の景色が戻ってきた。振り返っても、異形の者や影はもう見えない。だが、心臓の鼓動は治まらず、足元がふらつく。

「ここは…元の世界なのか?」

現実のように見える街並みが、どこか偽物のように思えた。僕はただ、逃げ切ったと思いたかった。しかし、どこかで感じる違和感が、再びあの赤い霧の中に引き戻されるのではないかという不安を拭い去ることはできなかった。



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