大学生の拓海は、趣味でよくカメラを持ち歩き、風景や友人たちとの思い出を撮影していた。ある日、友人の翔と街を歩いていた時、彼が不思議なアンティークショップを見つけた。ショーウィンドウに飾られていたのは、古ぼけた写真フレーム。その中には、どこか不気味な雰囲気を持つ一枚の写真があった。
「面白そうじゃん、ちょっと入ってみようぜ」と翔が言い出し、二人は店内に入った。薄暗い店内は古びた家具や雑貨で埋め尽くされ、店主は無口でただ静かに座っていた。拓海は、あの写真に惹かれ、つい手に取って見つめていた。それは、荒れ果てた森の中にぽつんと立つ古い建物の写真だった。周囲の風景はどこか現実離れしており、見るだけで背筋に冷たいものが走るような感覚がした。
「なんか気味悪いけど、記念に買ってみるか」と拓海は冗談半分でその写真を購入した。
その夜、帰宅した拓海はベッドの上にその写真を置き、何気なくスマホで写真を撮影した。スマホの画面に映し出されたその一枚を見た瞬間、異変が起こった。画面の中で、写真に写っていた古い建物が、わずかに揺れて動いたのだ。まるで生き物のように、風が吹き抜ける音さえ聞こえるようだった。
「…なんだ、これ?」驚いた拓海はスマホを放り出したが、目を離すことができなかった。そして、その瞬間、写真に吸い込まれるような感覚が彼を襲った。
視界が一瞬にして暗転し、気がつくと拓海は見知らぬ場所に立っていた。周りを見渡すと、あの写真に写っていた森の中だった。古びた建物が目の前にそびえ立ち、周囲は不気味な静寂に包まれていた。風の音すらなく、まるで時間が止まっているかのような世界だった。
「ここ…どこだ?」拓海は恐怖を抑えながら建物に近づいた。入口は半ば朽ち果てていたが、中に何かが彼を誘うような感覚があった。躊躇しながらも扉を開けると、建物の中には無数の写真が飾られていた。それは、彼がこれまでに撮ったことのない場所や人物が写った写真ばかりで、まるで別の世界の一部を切り取ったかのようだった。
さらに驚いたことに、その写真の中には、どこかで見覚えのある風景もあった。それは、自分が暮らしている世界に似ているが、少し異なる景色だった。現実と重なるようでいて、どこか歪んだ異世界。
「どうやってここから戻ればいいんだ…?」拓海は焦り始めた。出口を探そうとするも、建物の内部は迷路のように入り組んでいて、どこに向かっても同じような風景が広がっていた。彼が進むたび、廊下に飾られた写真は増えていき、そこに写る世界はさらに不気味さを増していった。
「誰かいるのか?」恐怖に駆られた拓海が叫んだ瞬間、背後からかすかな声が聞こえた。
「写真に…閉じ込められた…」声は囁きのように弱々しく、どこから響いてくるのか分からなかった。彼が振り返ると、廊下の奥にぼんやりと人影が見えた。よく見ると、それは拓海自身の姿だった。彼は自分が写真の中に写り込んでいることに気づき、恐怖に凍りついた。
「ここから出なきゃ…」必死に出口を探す拓海の周囲で、写真が次々と歪み、異世界の景色が現実と交錯していく。やがて、彼は元の世界に戻るためには、なぜか写真そのものを破壊しなければならないと思った。
意を決して、拓海は飾られている写真たちに手を伸ばし、次から次へと力強く引き裂いた。すると、周囲の景色が急激に崩れ始め、暗闇が彼を包み込んだ。目が覚めた時、彼は自分の部屋に戻っていた。あの不気味な写真は、破れたまま床に転がっていた。
「戻れたのか…?」
異世界に吸い込まれる恐怖を味わった彼は、あの日の出来事を誰にも話さず、ただ心の中に深く刻み込んだ。
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