私が彼女と別れてから、半年ほどが経っていた。時間が経つにつれて、少しずつ落ち着きを取り戻し、過去のことは忘れようとしていた。彼女との日々は楽しかったが、最後はお互いすれ違い、結局は別れを選んだ。それで良かったはずだと、自分に言い聞かせていた。
ある日、部屋の片付けをしていた時、古い写真が入った箱を見つけた。中には、彼女との思い出の写真が何枚も詰まっていた。別れた後は、ずっと見ないようにしていたが、何となく手に取って一枚ずつ見返し始めた。
笑顔の彼女が映る写真。二人で出かけた旅行先の風景。忘れていた感情が、少しずつ蘇ってくる。そして、ふと一枚の写真に目が止まった。彼女が公園で楽しそうに微笑んでいる、何の変哲もない一枚だったが、その写真をじっくり見つめるうちに、私はある異変に気づいた。
「…俺が、写ってる?」
彼女の後ろ、背景のぼんやりとした部分に、私の顔が浮かび上がっていた。だが、それは普通の写真とは異なり、薄く、はっきりとしないものだった。顔全体が輪郭だけで表現されているかのようで、どこか不気味だった。
その写真は、別れた直後に撮られたものではなかった。確か、付き合っている最中に撮ったはずの写真だ。それなのに、どうしてあの時点で、あたかも別れた後の「今の私」が彼女の背後にいるように写り込んでいるのか…。
「こんなこと、あるわけないだろ…」私は何度も写真を確認したが、明らかにそれは自分だった。過去の彼女の写真の中に、今の自分がぼんやりと写り込んでいる。どう考えてもあり得ない状況に、背筋が寒くなった。
だが、その写真を見つめ続けるうちに、私の中で何かが変わり始めた。彼女との日々を振り返り、当時の自分がどれだけ未熟で、彼女を大切にできなかったか、深い後悔が込み上げてきたのだ。
「もっとちゃんと向き合っていれば…」写真の中の自分が、まるでその後悔を示すかのように彼女の背後にいることが、私を苦しめた。過去に戻れないことは分かっている。それでも、あの時もっと何かできたはずだという思いが、次々と浮かび上がってきた。
その後、私は他の写真も見返してみたが、どれも変わらない。「彼女の写真」のどれかには、必ず私の顔がぼんやりと浮かび上がっているのだ。まるで、過去の自分が、現在の自分に「気づけ」と訴えているかのようだった。
過去の恋愛を後悔し始めるたび、その写真はますます不気味に思えてきた。彼女の笑顔の背後に、ぼんやりとした自分の顔が浮かび、私を見つめている。それは、過去の選択を後悔している証拠だったのかもしれない。
「もう一度、やり直せるなら…」
その後、私は彼女に連絡を取る勇気を持つことはなかった。しかし、あの心霊写真のようなものが、私の中でずっと残り続けた。それは、過去の自分との対話であり、私が繰り返し後悔し続けることを意味しているのかもしれない。
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