放課後、教室は薄暗くなり、夕焼けが窓から差し込む中、数人のクラスメイトたちが集まって話し込んでいた。話題は肝試しだった。誰かが、近くの山にある心霊スポットの話を持ち出したからだ。古い廃墟のような場所で、昔、何人かが事故に遭い、それ以来「出る」と噂されていた場所だった。
「行こうぜ、今夜。みんなで肝試ししよう!」クラスのムードメーカーが大きな声で提案すると、教室の雰囲気が一気に盛り上がった。友人たちは「面白そう!」と笑いながら賛同した。
しかし、その中で一人だけ、顔をしかめて黙っている少女がいた。アキだ。彼女は霊感が強いことで知られていたが、それを嫌っていた。見たくないものが見えるのは、普通の生活には重荷でしかなかったからだ。
「アキ、お前も来いよ!怖がりのくせに、霊感あるって噂じゃん?」ムードメーカーがニヤリと笑いながらアキに声をかけた。
アキは眉をひそめ、「やめておいた方がいいよ。あそこ、冗談じゃすまない場所だから…」と低い声で答えた。
「何言ってんだよ!みんなで行けば怖くないって。そもそも、本当にそんな場所なら、なおさら行くしかないだろ?」
アキは視線を落としながら、過去に自分が体験した恐怖を思い出していた。数年前、あの場所に行ったことがある。彼女はその時、まだ霊感が強いことに気づいていなかったが、あの廃墟で何かに触れた瞬間、全身に寒気が走り、呼吸もできないほどの恐怖に襲われた。
「あそこは、近づかない方がいい。…前に私が行った時、建物の奥にある部屋で、見てしまったの。真っ暗な部屋の隅に、誰かがしゃがみこんでこっちを見てた。でも、顔はないんだ。ただの影のような…存在が、じっと見つめてきたの。すぐに逃げ出したけど、しばらくは夜中に同じ姿が夢に出てきて、何度も追いかけられた。」
教室は一瞬静まり返った。アキの真剣な声と、その内容に、数人は一瞬怯んだようだったが、ムードメーカーは笑い飛ばした。
「そんなことあるわけないだろ!影のような存在って、まるでホラー映画じゃん!」
アキは何も言わずにため息をついた。彼女がどれだけ警告しても、彼らが耳を傾けることはないだろうと悟った。
その夜、アキは嫌々ながらも友人たちに付き合わされることになった。どうしても断りきれなかったのだ。場所は町外れの山中にある、古びた廃墟だった。薄暗い森に囲まれたその場所は、昼間でも不気味な雰囲気が漂っていた。
到着すると、ムードメーカーを筆頭に、友人たちは恐怖を楽しむように廃墟の中に入っていった。アキはしぶしぶ後ろについていったが、心の中ではずっと嫌な予感がしていた。
「ここ、マジで気味悪いな…」
廊下を歩きながら、友人たちは少しずつ怖がり始めた。壁にはカビが生え、窓ガラスは割れている。床もところどころ朽ちていて、踏みしめるたびに軋む音が響く。空気が重く、息が詰まるような感覚があった。
「おい、あの部屋が噂の場所らしいぞ。」ムードメーカーが指差したのは、建物の奥にある一室だった。ドアは半開きになっていて、中は真っ暗だった。
アキはその部屋を見た瞬間、全身に悪寒が走った。「やめて…あの部屋は、本当に危ない…」とつぶやいたが、彼らは止まる気配がなかった。
ムードメーカーがドアを押し開けた瞬間、部屋の中から強い風が吹きつけてきた。誰かが窓を開けているはずもないのに、冷たい空気が一気に体を包んだ。その時、アキははっきりと感じた。何かがいる。
彼女はその場から動けなくなった。足が震え、心臓が激しく鼓動する。部屋の中をじっと見つめると、奥の隅に何かが「ある」ことがわかった。
「そこ、見ない方がいい…」アキは絞り出すような声で言ったが、友人たちは彼女の言葉を無視し、部屋に入っていった。
次の日、クラスメイトたちは教室で昨夜の肝試しを面白おかしく話していた。
「いやー、怖かったけど、やっぱり幽霊なんていなかったな!」
「途中で風が吹いてきた時はビビったけどな!」
ムードメーカーも他の友人たちも、肝試しを笑い話にしていた。しかし、アキは一人、黙ったまま彼らを見つめていた。そしてムードメーカーをじっと見た時、彼の背中に黒い影がまとわりついているのを見てしまった。
「ちょっといい?」アキは彼に近づき、低い声で言った。
「あなた、霊がついてる。昨日の場所から連れてきたんだと思う。お祓いを受けた方がいい。」
彼は最初笑い飛ばした。「冗談だろ?俺は平気だって!何も感じないし、見えてもないんだから。」
しかし、アキは真剣な顔で続けた。「放っておくと、もっと悪くなるよ。何か起こる前に行った方がいい。」
ムードメーカーはしばらく黙り込んでいたが、結局「また今度な」と軽く言ってその場を去った。アキの胸には不安が残ったが、彼が今は信じていないこともわかっていた。
数日後、彼はアキに助けを求めてきた。
「お前の言ったこと、あれ本当だったんだな…。最近、毎晩悪夢を見るし、夜中に部屋の中で誰かの気配を感じるんだ。もう耐えられない…頼むから助けてくれ。」
彼の顔は疲れ切っており、目の下にはクマができていた。アキは黙って頷き、彼を連れて自分が知っている神社へと向かった。
神社に着くと、アキはすぐに神主に事情を説明した。神主は彼の背中をじっと見つめ、お祓いの準備を始めた。
お祓いが進むにつれて、彼は何度も体を震わせ、冷たい汗が流れていた。だが、儀式が終わると、彼の顔色は少しずつ戻っていった。
「ありがとう…本当に助かったよ。」彼は心からのお礼をアキに言い、深々と頭を下げた。
アキは少し微笑みながら、「もう二度とあの場所には近づかないで」と言った。それ以上何も言わずに。
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