夏の夜、学校帰りにクラスメイトたちは教室で話し込んでいた。話題は心霊スポット。少し外れた山奥にある廃神社の話が持ち上がった。以前から「出る」と噂されていたその場所に、誰もが興味を持ち始めていた。
「今夜、肝試しに行こうぜ!」リーダー格のリョウが提案すると、周りの友人たちは面白がって賛成した。放課後、みんなで集まって心霊スポットに行く計画が瞬く間に決まった。
ただ、一人だけ浮かない顔をしている人物がいた。ミカだ。彼女は小さな頃から霊感があり、それを嫌っていた。見えることも感じることも、自分ではどうしようもない力だが、それが彼女にとっては常に恐怖だった。
「私、行かないから…」ミカは静かに言った。だが、リョウたちは彼女を見て笑った。
「おいおい、怖がるなって!大丈夫、みんなで行けば怖くないだろ?」リョウは軽い調子で誘い続ける。
「本当に行かないほうがいい。あそこは…やばい場所だって聞いたことがある。何か悪いものがいるって。」ミカは必死に警告したが、クラスメイトたちは聞く耳を持たなかった。
「お前、そんなにビビってるのかよ?霊感あるなら、逆に頼りになるじゃん!ミカが見えるならすぐに逃げればいいんだよ。」
周りが笑いながら同調し、結局ミカはしぶしぶ行くことになった。断り切れず、心の中で何かが「やめておけ」と叫んでいるのを無視しながら、彼女は彼らと一緒にその心霊スポットへ向かった。
夜になり、一行は目的地の廃神社に到着した。月明かりだけが薄暗い道を照らしており、木々の間から風が吹き抜ける音がやけに大きく聞こえた。全員、口には出さないが、どこか不気味な空気を感じていた。
「なんだ、全然怖くねぇじゃん!」リョウは強がって先頭に立ち、神社の境内へ進んでいった。彼についていく友人たちも、軽く冗談を言い合っていたが、笑い声はどこかぎこちない。
ミカは後ろからついていった。彼女は無言だった。霊感を持つ彼女には、明らかに異質な気配が感じ取れた。空気が重く、肌にまとわりつくような寒気が全身を駆け巡っている。誰も気づいていないが、ミカにはそこに「何か」がいるのがわかっていた。
神社の奥に進むにつれて、ミカの恐怖は増していった。木々の影が不気味に揺れ、耳の奥で微かな囁き声が聞こえる。それが霊の存在であることを彼女は直感的に理解していた。
そして、突然、ミカはその場に立ち尽くしてしまった。目の前には、他のクラスメイトたちには見えない「それ」が立っていたのだ。
「…見える…」ミカの声は震えていた。
「おい、どうしたんだ?」リョウが振り返って冗談半分で聞いたが、彼女の表情を見た瞬間、その顔から笑みが消えた。ミカの顔は真っ青で、全身が震えている。まるでそこに何か「見てはいけないもの」を見てしまったかのような恐怖が彼女を包んでいた。
「本当にいる…そこに…立ってる…」ミカは指を震わせながら前を指差した。だが、他のクラスメイトたちには何も見えない。見えないはずの何かを、彼女は明確に「見ている」。
それだけで、周りの空気が一気に凍りついた。リョウや他の友人たちも、何かが間違いなく「まずい状況」であることを感じ取り、笑っていた表情が強張り始めた。
「おい、ミカ、嘘だよな?冗談だろ?」リョウが動揺しながら問いかけるが、ミカは恐怖で震え、答えることができない。
その時だった。
「ギャァァアアアアアア!」
人間とは思えない、凄まじい叫び声がどこからともなく響き渡った。全員が一斉に立ちすくんだ。その声は明らかにこの世のものではなかった。耳をつんざくようなその音は、神社全体に反響し、辺りの木々さえ震えさせるようだった。
「逃げろ!!」
誰かが叫んだ。全員がパニックに陥り、後先考えずに来た道を一斉に駆け出した。足音が重なる中、リョウが一瞬振り返ったが、すぐにまた前を向き、必死で走った。ミカは先頭の方にいたが、恐怖で足がもつれながらもなんとか逃げ切った。
次の日、教室は静まり返っていた。昨夜の出来事が、全員の心に強く刻まれていたからだ。リョウは友人たちと小声で話していたが、その顔はまだ青ざめている。
「昨夜、マジで何だったんだ…?あの叫び声、絶対おかしいだろ…」
誰も笑わなかった。昨夜の体験は、怖がりながら楽しむ類のものではなかった。全員が心の底から怖がっていた。そして、ミカが言っていた「見えた」という言葉が、重く彼らの中に残っていた。
「二度とあそこには行かない…」リョウは静かに言った。みんなも無言で頷いた。もう一度あの場所に行こうという者はいなかった。
ミカも、あの時見たものが何だったのかは語らなかった。ただ一つ、彼女も心に誓っていた。絶対に、あの場所には近づかないと。
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