私が住んでいるマンションは、静かな住宅街にある古い建物だ。建物自体は年季が入っているものの、特に怖い噂があったわけでもなく、私は何の問題もなく過ごしていた。けれど、友人のナナが初めてここに来た時、彼女はすぐに違和感を感じ取った。
ナナは昔から霊感が強いことで知られていたが、その力をあまり自慢することはなかった。むしろ、彼女はその感覚を嫌がっていた。「見える」ということは、普通の生活には重荷でしかなかったからだ。
その日、私はナナを部屋に招いて、久々に映画でも観ようと計画していた。リビングで映画の準備をしながら、彼女が窓の外をぼんやりと見ているのに気づいた。彼女の顔は、どこか青ざめていた。
「どうしたの?」私は不思議に思い、ナナに尋ねた。
「ううん、ちょっと…何でもない。」ナナは苦笑いを浮かべながら言ったが、その表情は明らかに違和感を覚えている様子だった。私は少し気にしつつも、特に深く考えることはなかった。
その夜、映画を観終わり、私たちはリビングでだらだらとおしゃべりしていた。時間はすでに夜10時を過ぎ、外はすっかり暗くなっていた。マンション全体も静まり返り、廊下からは何の音も聞こえない。
「ねぇ…このマンション、誰か住んでる?」突然、ナナが静かに言った。
「え?もちろん住んでるよ。他の階にも普通に人がいるけど、何で?」
ナナは窓の外をじっと見つめたまま、ぽつりと呟いた。「いや、さっきから感じるんだ。ここの空気が重いっていうか、誰かがずっと見てる気がする。」
その瞬間、私の背中に冷たいものが走った。ナナが言う「誰かが見ている」という言葉が、異様に現実的に感じられた。
「やめてよ、そんなこと言わないで。」私は少し笑いながら言ったが、内心は不安だった。ナナは霊感が強いことで有名で、冗談を言うような子ではなかったからだ。
ナナは黙り込んだまま、リビングの隅をじっと見つめている。私もその方向に目を向けたが、当然ながら何も見えない。部屋には私たち二人しかいないはずだ。
「…実は、このマンション、前にここに住んでた人が…」ナナが再び口を開いた。
「何?」
「この部屋で亡くなったって聞いたことがある。事故なのか、自殺なのかはわからないけど、そのせいでここに何かが残ってるんじゃないかって…」
私は驚いて目を見開いた。そんな話は聞いたことがなかった。私はすぐにナナに問い詰めようとしたが、その時、リビングの窓が突然「カタカタ」と音を立てて揺れた。風もないはずなのに、窓だけがまるで何かが触れているかのように震え始めた。
「な、何これ…?」私は震える声で言った。
ナナは目を閉じ、息を潜めるようにして何かを感じ取っているようだった。
「ここにいる…誰かがずっと見てる。でも、姿は見えない。だけど、確かにこの部屋にいる…」ナナは顔を歪め、恐怖を押し殺すように話した。
その瞬間、リビング全体が一気に冷え込んだような感覚に襲われた。私たちは、しばらく言葉を失って座り続けていた。窓の音が止んだ後も、部屋全体が重苦しい空気に包まれていた。
「もう…帰ろうかな。」ナナは静かに立ち上がった。彼女の顔には明らかに何かを見た恐怖がにじみ出ていた。
「うん…私も今日はもう寝ようかな…」
ナナが帰った後、私はその夜ほとんど眠れなかった。何度も窓の方を確認したが、何も変わった様子はない。ただ、ナナが見た「何か」がこの部屋にいるという事実が、私を不安にさせ続けた。
次の日、私はナナに連絡を取った。
「昨日のことだけど、本当に何か見えたの?」
電話の向こうでナナは一瞬黙り込んだ。そして、ゆっくりと答えた。
「見えたというより、感じたんだ。何かがそこにずっといた。私たちをじっと見てた。でも、これ以上そのことについて考えない方がいい。あの場所に何かがいるのは確かだけど、深入りすると危険だから…。」
その言葉に、私は恐怖が再び胸に押し寄せた。ナナの霊感が正しいのかどうかはわからないが、あのマンションで感じた異様な空気と重い雰囲気だけは、確かに現実のものだった。
それ以来、私は部屋の隅や窓に目を向けるたび、誰かがそこに立っているのではないかという恐怖を感じるようになった。
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