怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

霊感を持つ男アキラが語る、依頼主が絶対に教えなかった恐怖の正体…彼に見えたものとは? 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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いつもの喫茶店で、私とリョウはアキラを囲んで座っていた。アキラの話を聞くたびに、恐怖と好奇心が混ざった不思議な感覚に襲われる。今日もそんな複雑な気持ちを抱きながら、アキラの新しい話を聞きたいと心待ちにしていた。

いつものように、アキラが静かに話を切り出した。

「今日は、少し異質な依頼の話をしようと思う。俺自身も、あの時は少し肝を冷やした出来事だった。」

そう言ってアキラは目を伏せ、話し始めた。

「依頼があったのは、今から半年くらい前のことだ。依頼主は50代くらいの男性で、俺に連絡を取ってきた時には、すでに相当怯えていた。電話越しの声が震えていたのを、今でも覚えている。彼は自宅で『何かがおかしい』と感じて、俺に助けを求めてきたんだ。」

アキラはその依頼主がどれほど恐怖に駆られていたかを説明しながら、冷静な表情をしていた。しかし、その話の中に漂う緊張感は明らかだった。

「最初に会った時、依頼主はすでに顔色が悪く、目の下には深いクマができていた。『何があったのか教えてくれ』と聞いたんだけど、彼は最初から何も教えてくれなかったんだ。何かを見たのは間違いないんだけど、その内容を絶対に口にしなかった。何度か聞いてみたけど、ただ首を振るだけで、話すことを拒んでいた。」

その状況を聞いて、私は思わず口を挟んだ。「その状況で、よくそんな依頼を受けたな。」

アキラは少し苦笑いしながら、続けた。「まあ、仕事だからな。とは言え、その時は確かに、彼が怯えている理由がわからなかったから、少しだけ慎重にはなっていた。」

「依頼主の家は郊外にある、少し古びた二階建ての一軒家だった。見た目は何の変哲もない、普通の家だよ。だけど、家に入った瞬間、異様な雰囲気を感じた。空気が重く、何かに圧迫されるような感覚だった。依頼主は、その家のどこかに『何かがいる』と言っていたが、正確に何を見たのかは、やはり教えてくれなかった。」

アキラの話を聞いていると、その家の不気味さがこちらにも伝わってくるようだった。リョウも黙って聞き入っていた。

「家の中を一通り調べ始めた時、リビングの片隅に異様な気配を感じた。そこに『何か』がいた。明らかに人間ではない、異質なものが。俺にははっきりと見えたんだが、依頼主には見えなかったようで、彼はただ怯えた表情で俺の背後に隠れた。その『何か』がじっと動かず、そこに存在していることを感じて、俺はすぐに状況が普通じゃないとわかった。」

その場面を想像すると、私は背筋に冷たいものが走った。

「依頼主がその時、恐怖に震えながら俺に聞いてきたんだ。『あなたには、何が見えるんですか?』と。」

アキラはその瞬間のことを思い出し、少し表情を曇らせた。

「俺は正直に答えた。『そこに人型のモノがいる。だが、普通じゃない』って。実際、その時俺が見たのは、リビングの隅に立ちすくむ異形の『人』のような存在だった。身長は異常に高く、腕が長すぎる。顔は歪み、目も鼻も口もあったが、それぞれの位置が微妙にズレていた。そして何より、そのモノの口が大きく開いて、まるで何かを叫びたいのを必死にこらえているようだった。俺を見ているんじゃない。俺の『奥』を見ているような、そんな視線を感じた。」

アキラは一瞬黙り、コーヒーを一口飲んでから話を続けた。

「その異形のモノは、まったく動かないんだ。ただそこに立っているだけ。でも、視線は感じた。まるで、俺たちの背後の何かを見つめているような感じでな。まるで時間が止まったかのような空間の中で、存在感が異常に強かった。依頼主には何も見えていなかったが、俺がその存在について話した瞬間、彼は顔色を失い、震えだした。」

リョウが小さな声で聞いた。「それで、そのモノはどうなったんだ?」

「何もしてこなかった。ただ、あの異常な形で、じっとそこにいたんだ。家の空気全体が、そのモノの存在に支配されているかのようだった。俺は依頼主にすぐにお祓いを勧めた。彼はすぐにその場を後にしたが、最後まで何がきっかけでこうなったのか、そして彼が何を見たのか、教えてはくれなかった。」

「そのモノの正体って、結局何だったんだ?」私は恐る恐る尋ねた。

アキラはゆっくりと首を振った。「わからない。ただ、俺が見たのはそこにいた異形の霊だ。でも、依頼主が何を見て、何を感じたのかは、今もわからない。彼が怯えていたのは、その霊とは別の何かだったのかもしれない。あの家にはまだ答えがある気がするが…俺は戻りたくない。」

依頼主が怯えて口にできなかった恐怖。アキラが見た異形の霊は、その恐怖のほんの一部に過ぎなかったのかもしれない。あの家で起きたことの全貌は、依頼主だけが知っている。しかし、その家の重苦しい空気がすべてを物語っていた。



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