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霊感を持つ男アキラが語る、異世界に迷い込んだ瞬間…現実との境界を越えた恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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喫茶店に集まった私とリョウは、いつも通りアキラの話を待っていた。しかし、今日はアキラが少し違った雰囲気を漂わせていた。これまで聞いてきた怖い話も、どこか現実に基づいた恐怖が感じられたが、今回の話はそれとは一線を画すようだった。アキラの目つきが鋭く、いつも以上に慎重に話を選んでいるようだった。

「今日話すのは、俺が実際に『現実じゃない場所』に足を踏み入れた時の話だ。」

その言葉に、私もリョウも思わず息を呑んだ。異世界—それは私たちにとって全く未知の場所で、ただの噂や物語の中でしか存在しないように思っていた。しかし、アキラが語るそれは、まさに彼自身が体験した現実の恐怖だった。

「数年前、俺はある依頼を受けて山奥の古い村に行った。その村は長い歴史を持っていて、住民の大半は高齢者だった。依頼主は村の世話役をしている男性で、『村全体に異様な空気が漂っている』と話していた。」

アキラは少し間を置いて、続けた。

「村に到着した時、確かに違和感を覚えた。空気が静かすぎるんだ。風の音も鳥の鳴き声もなく、周囲は異様な静寂に包まれていた。依頼主の家に向かう途中、俺は少し迷子になりかけた。村の中を歩いているうちに、道がどんどん入り組んでいて、気づけばどこを歩いているのかわからなくなっていたんだ。」

アキラの話を聞きながら、私はその場に立ち会っているかのような緊張感を感じた。

「それでも、何とか依頼主の家にたどり着いた。彼の話によると、村のいくつかの場所に『境界』があるという。境界…つまり、現実と異世界の境目だ。彼は村の歴史や古い言い伝えを語ってくれたが、その内容はあまりにも抽象的で、最初は俺もあまり気にしていなかった。だが、その話の中で一つだけ、妙に引っかかることがあったんだ。」

リョウが少し前のめりになり、興味津々に聞いていた。「引っかかったって、何が?」

「依頼主は、『村の奥にある古い祠に決して近づいてはいけない』と言ったんだ。そこは昔から神聖な場所とされていて、下手に足を踏み入れると『帰れなくなる』と言われていた。その時は、ただの言い伝えだと思っていたが、どうしても気になってしまって、俺はその祠に行ってみることにした。」

アキラはその時の決断を思い返しながら、少し表情を曇らせた。

「村の道を歩いていくと、次第に周囲の景色が変わっていった。最初は普通の山道だったんだが、いつの間にか木々の形や色が妙に歪んで見えるようになった。気づけば、足元に生えている草も見たことのない植物に変わっていて、風の音が耳元で囁くように聞こえるんだ。まるで空間そのものが歪んでいる感覚だった。」

アキラの話を聞いて、私もリョウも背筋が凍るような感覚を覚えた。

「その時、突然道が途切れて目の前に古びた祠が現れた。祠は木々に覆われ、今にも崩れそうなほど古びていたが、不思議な力を感じた。俺は慎重にその祠に近づいた。何かが起こるんじゃないかという不安と、何も起きないんじゃないかという期待が入り交じっていた。」

アキラはその時のことを思い出しながら、少し顔を歪めた。

「その瞬間、空気が一変したんだ。足元がふらつくような感覚に襲われ、景色がぐにゃりと歪んだ。次の瞬間、俺は全く違う場所に立っていた。村でも山の中でもなく、全てがぼやけた、色彩が薄い世界だった。」

リョウが目を見開いて聞いた。「それって…異世界?」

「そうだ。まさにその時、俺は現実の世界から異なる場所に足を踏み入れてしまったんだ。周りは何もない。ただ、遠くに何か巨大な影のようなものがうごめいているのが見えた。俺は何とか戻らなきゃと思って必死に祠の方向に歩こうとしたが、足が前に進まない。まるで空気が重くなって、動くのが困難になったんだ。」

アキラの言葉に、私の心臓は早鐘を打った。

「そして、その影が俺に近づいてくる。姿ははっきりとは見えないが、圧倒的な存在感と異様な気配を放っていた。あれは霊ではなかった。もっと別の…得体の知れない存在だ。俺はその時、これ以上この場所に留まってはいけないと強く感じた。何かに吸い込まれるような感覚があって、その影に取り込まれたら二度と戻れないと思ったんだ。」

アキラはコーヒーを一口飲み、少し息を整えた。

「俺は祠に全力で手を伸ばした。その瞬間、景色がまたぐにゃりと歪んで、気がついた時には元の山道に戻っていた。全身に冷や汗をかいていて、心臓の鼓動がまだ激しかったが、周りはいつもの風景に戻っていたんだ。あの影が何だったのか、あの場所が本当に異世界だったのか…今でも正直言ってわからない。ただ、俺はあの場所に『足を踏み入れた』という確信がある。」



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