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夢に潜む偽りの人々――心療内科での告白 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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「最近、またあの夢を見るんです…」

心療内科の診察室で、私はいつものように先生の前に座っていた。薄暗い部屋には静かな音楽が流れていて、少しだけ心が落ち着く。先生は私の目をじっと見つめ、いつもの優しい声で尋ねてきた。

「どんな夢なんですか?」

私はため息をついて、ゆっくりと話し始めた。

「毎晩、見知らぬ街に迷い込むんです。その街には…人はいるんですけど、どこかおかしいんです。みんな、全員が同じような笑顔を浮かべていて…でも、その笑顔がどうしても不自然で、作り物のように感じるんです。」

「笑顔が不自然…それは、どういう感じですか?」

先生の問いに、私はさらに言葉を探した。

「彼らの目が、まるで焦点が合っていなくて、ガラス玉みたいなんです。口元は笑っているけど、目は笑っていないし…動きも、どこかぎこちない。まるで、人間じゃないものが人間を真似しようとしているかのように見えるんです。」

先生は頷きながら、さらに聞いてきた。

「その夢の中で、あなたは何を感じますか?」

「恐怖です…彼らが、私をじっと見つめてくるんです。無言で、満面の笑みを浮かべて、ただ私を見ているだけ。でも、その視線が怖くて、息苦しくて…」

話をしているうちに、夢の中の光景が頭に鮮明に浮かび上がってきて、胸が締めつけられるような感覚が蘇ってきた。私は手のひらに汗がにじむのを感じながら、深呼吸をした。

先生はメモを取りながら、優しい声で質問を続ける。

「その夢の中で、あなたは何かをしようとしていますか? 逃げようとしたり、話しかけようとしたり…」

私は少し考えてから答えた。

「逃げようとしても、足が動かないんです。まるで、そこに縛りつけられているような感覚で。何かを話しかけようとしても、声が出なくて…ただ、じっと偽りの人間たちに囲まれて、どうしようもなくなるんです。」

先生は一瞬考え込み、再び優しい声で聞いてきた。

「その街には、誰か助けてくれる存在はいないんですか? 誰かに話しかけたり、助けを求めたことは?」

私は首を振った。

「いいえ…誰も助けてくれないんです。周りの人間は全員、偽りの人間です。彼らは話すこともなく、ただ笑っているだけ…でも、時々、警備員のような人が現れることがあるんです。制服を着た人で、私を見て『ここには来ちゃダメだ』って優しく言うんです。」

先生は少し眉をひそめ、興味深そうに聞いた。

「その警備員のような人は、他の偽りの人々とは違うんですか?」

「はい、彼は違います。目は焦点が合っているし、表情も普通で…その人だけが、私に何かを伝えようとしているみたいなんです。彼が現れると、夢の終わりが近いんだって分かるんです。彼が現れて私に『ここに来ちゃダメだ』って言った瞬間、いつも目が覚めるんです。」

先生は静かに頷きながら、メモを取っていた。そして、しばらくして、再び口を開いた。

「その夢は、毎晩同じなんですか?」

私は少し考えてから答えた。

「似たような街や場所だけど、細かいところが少しずつ違うんです。でも、必ず偽りの人たちがいて、笑顔を浮かべている。私は、逃げたくても逃げられず、最後に警備員のような人が現れる…そうして目が覚めるんです。」

話しながら、再び夢の中の恐怖がじわじわと蘇ってくる。私は手のひらの汗を感じ、体が少し震えていることに気づいた。先生はそれに気づいたのか、静かに私を見つめたまま、少し待ってから再度質問した。

「その夢を見る前に、何か特別な出来事がありましたか? それとも、いつからその夢を見るようになったか覚えていますか?」

「…そうですね。特にこれというきっかけは覚えていないんです。ただ、最近、仕事のストレスが増えてきて、それと同時に夢を見る頻度が増えた気がします。でも…この夢が現実のように感じられて、怖いんです。もしかして、あの偽りの人間たちは、本当にどこかに存在するんじゃないかって…」

先生は穏やかに頷きながら、私の話をじっくりと聞いてくれていた。そして、最後に優しい声でこう言った。

「夢は、あなたの心が作り出す世界です。偽りの人々も、恐らくあなたの中にある不安やストレスが形を変えて現れているんでしょう。でも、夢は夢です。そして、その夢の中で唯一、あなたを助けようとしている存在――その警備員のような人――は、あなたの心が何かを訴えかけているのかもしれません。」

私は先生の言葉をじっと聞きながら、少しだけ心が軽くなるのを感じた。

「夢は夢…」

そう自分に言い聞かせながら、私は少し安堵した気持ちで診察室を後にした。しかし、完全に恐怖が消え去るわけではない。また今夜も、あの笑顔の偽りの人々に囲まれる夢を見るのかもしれないと思うと、胸の中に小さな不安が残ったままだった。



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