私が夜間警備員として働いているオフィスビルは、築何十年も経過した老朽化が激しい小さなビルだ。廊下の床は所々剥がれ、壁にはヒビが走り、エレベーターも古びていて、まるで時代に取り残されたような場所だ。
入居者も少なく、多くのフロアが空室で、昼間でも人が少ない。夜になるとビル全体がひっそりと静まり返り、まるでゴーストタウンのような雰囲気が漂っている。入っている会社もどこか怪しい事業をしているところばかりで、明らかに「普通ではない」ことが多い。
そんな中、ある日、新たな会社が入居してきた。会社名は奇妙で、何をしているのか一見わからない。だが、その社名からして、何かしら霊的なことに関わっているのはすぐに察しがついた。
しばらくして、その会社から深夜の見回りを依頼された。契約上、入居者が警備を依頼することは珍しくないが、通常は貴重品や高額商品を扱う会社が依頼してくる。それなのに、今回依頼してきたのは、あの怪しい新しい会社だった。
その夜、私は依頼されたオフィスに向かうことになった。ビルの3階に入居しているその会社は、昼間も薄気味悪い雰囲気が漂っていたが、深夜になるとその不気味さがさらに際立っていた。
ドアを開けると、まず目に飛び込んできたのは、オフィスの異様な装飾だった。壁には奇妙なシンボルや古代文字のようなものが描かれており、明らかに普通のオフィスではないことがわかった。壁際には、黒いキャンドルが無造作に置かれ、薄暗い明かりがゆらゆらと揺れていた。
さらに、部屋の一角には大きな祭壇のようなものが設置されていた。何かを崇拝しているのか、その祭壇には、怪しげな彫像や、不気味な写真が並んでいた。彫像は人型だが、顔が歪んでいて、目は赤く光っている。まるでこちらをじっと見つめているかのような感じだった。
見回りを進めると、机の上には何やら書類が散乱していたが、そこに書かれている内容は理解不能なものばかりだった。見たこともない言葉やシンボルが並び、一つ一つが不気味な印象を与えた。
その時、背後で何かが動いたような気配を感じた。振り返っても誰もいない。だが、確かに何かがそこにいたような感覚があった。全身に冷たい汗が流れ、心臓がドクドクと鳴り出した。
さらに奥へ進むと、そこにはガラスケースが並んでいた。中には奇妙な物が陳列されていた。ホルマリン漬けされた動物の標本、人形の頭部、さらには黒く染まった何かの骨のようなものまであった。私はその場で言葉を失い、背筋が凍りついた。
「こんな会社、一体何をしてるんだ…?」
オフィスの一角には、大きな鏡が立てかけられていた。鏡は古びていて、ガラスの表面には無数のひび割れが走っていた。その前に立った瞬間、私の背後に何かの気配を感じた。だが、振り返っても誰もいない。ただ、鏡越しに、何かがじっとこちらを見つめているような気がした。
その瞬間、突然冷たい風が部屋の中を吹き抜けた。窓は閉まっているはずなのに、強烈な風が部屋全体に渦巻き、まるで何かが目を覚ましたかのような感覚に襲われた。
私は耐えきれず、早足でオフィスのドアに向かって逃げ出した。出口に向かう途中、壁に掛けられた絵画が勝手に揺れ出した。その瞬間、私は全身が凍りつき、振り返ることもできずに、ドアを開けてオフィスから飛び出した。
その後、ビルの管理人にその話をしたが、「あの会社、ちょっと怪しいよな」と苦笑するだけで、特に気に留める様子はなかった。しかし、私はそのオフィスにもう一度入る気にはなれなかった。
あの夜、私は確かに何か異常なものを感じた。あの不気味なオフィスで、何が行われているのかは今でもわからない。ただ、あそこに足を踏み入れた瞬間、何か目に見えない力が私を押し返そうとしていたのは間違いない。
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