喫茶店の薄暗い照明の下、アキラは今日も静かに話を始めた。彼の語る怖い話は、いつも得体の知れない恐怖をまとっている。今日の話も、その不気味さが伝わってくる導入だった。
「これは、俺が本当に不気味な体験をした時の話だ。自宅のインターホンの録画履歴に『映ってしまった』ものの話だ。あの時は、何が起こったのか最後までわからなかった。」
「その日は外出していて、夜遅くに家に帰ったんだ。いつも通りインターホンの画面を確認すると、録画履歴のランプが点灯していた。俺が家を空けていた間に誰かが訪ねてきたってことだ。別に珍しいことじゃないけど、嫌な予感がしたんだよ。」
アキラはその時の記憶を思い返すように、眉をひそめた。
「画面をタッチして録画された映像を再生したんだ。映っていたのは、見知らぬ男だった。年齢は30代後半から40代くらいか。白いシャツを着て、無表情でカメラをじっと見つめていた。だが、目が異常だった。まるで、目の奥に何もないように見えた。魂が抜け落ちたかのような、そんな目をしていたんだ。」
私とリョウはその話を聞いて、ぞくりと寒気を感じた。
「普通の人間じゃないことは、映像を見た瞬間にわかった。男はただじっと立っているだけで、一言も話さない。しばらくその無表情のままカメラを見つめ続けて、最後にすぅーっと薄くなっていったんだ。まるで煙のように、画面の中から消えてしまった。」
「…それ、本当に人間じゃなかったのか?」リョウが震える声で聞いた。
「ああ、人間じゃなかった。確信している。何かを伝えに来たのか、それとも俺に何かを求めて来たのか…理由はわからないが、ただならぬものだったのは確かだ。」
「その後も、何が起こるわけでもなく、日常は普通に続いたんだ。ただ、インターホンに残った映像が気になって仕方なかった。あの無表情の男が、何の目的で俺の家を訪れたのか、結局わからないままだ。」
アキラはコーヒーをすすりながら、静かに話を締めくくった。
「俺の感覚では、あの男はただの霊じゃない。もっと重たい何か、理由がある存在だった気がする。だが、その理由を知る手段もない。あの日以降、再び同じ男が映ることはなかった。」
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