僕は、数年前に一人暮らしを始めた。特に怖がりでもないし、夜遅くに帰宅しても、部屋で不気味な思いをしたことはない。都会のど真ん中にあるマンションで、気味が悪い場所とは無縁だと思っていた。
でも――最近、妙なことが起こるようになった。
目次
始まりは写真立て
僕の部屋の棚には、両親と一緒に撮った家族写真を入れた写真立てが飾ってある。引っ越してからずっとその場所に置いていて、普段は気に留めることもない。ただ、数日前からその写真立てが――なぜか倒れているのだ。
最初は自分の不注意かと思って、立て直した。でも翌日、また棚の上で倒れていた。
「……風で倒れたのかな?」
部屋に風なんて入ってくるはずがないのに、なぜかその可能性を考えた。でも、部屋には窓がなく、風なんて入ってくるはずがない。
「ただの偶然だよな」
そう思って立て直したが、次の日もまた倒れていた。
何度立てても倒れる
それからというもの、僕は毎朝写真立てを立て直すことになった。
夜寝る前にきちんと立てておいても、朝には必ず倒れている。誰かが触ったわけでもないのに、気づけばいつも同じ角度で倒れているのだ。
「やっぱりおかしい……」
そう思いつつも、僕は写真立てを立て直すしかなかった。
倒れる理由
その日も帰宅して、部屋に入った瞬間――。
僕は凍りついた。
棚の上の写真立てが僕の部屋のほうに倒れていたのだ。まるで「こちらを見ている」ような、何かの意図が感じられる倒れ方だった。
なぜか不安が胸に湧き上がり、僕は写真立てを手に取ってみた。
写真立てに刻まれたメッセージ
倒れた写真立てを拾い上げて裏を見てみると、そこには、何か文字が書かれているような跡があった。
「……こんなもの、今まであったか?」
薄暗い照明の下で、僕は写真立ての裏をじっと見つめた。すると――そこには、指で書かれたかのような跡が浮かび上がってきた。
「……助けて」
ぞっとした。僕は慌てて写真立てを元に戻し、その場を離れた。
夢の中の声
その夜、僕は不思議な夢を見た。夢の中で、誰かが僕に向かって手を伸ばしている。ぼんやりとした輪郭で顔は見えないが、何かを訴えかけてくる気配がした。
「……助けて……」
その声は、まるで何かに苦しんでいるようだった。
目が覚めた僕は、急いで写真立てを確認した。だが、そこには何の変化もなく、ただ静かに立っているだけだった。
(ただの夢だ……)
そう思い込もうとしたが、それからも夢の中で助けを求める声が響くようになった。
真相
不安を抱えながら、僕は写真立てを詳しく調べてみることにした。両親との写真を入れたとき、特に気に留めずに飾っただけだったが、何かが気になって仕方なかったのだ。
すると――写真の裏にもう一枚の写真が入っているのに気づいた。
その写真には、知らない若い女性が写っていた。
「……誰だ……?」
見覚えのない女性の顔が、ぼんやりとこちらを見つめている。
その写真は、僕が家族写真を入れる前から、すでにこの写真立てに挟まれていたのだろうか?
最後の夜
その夜も、僕はまたあの夢を見た。今度はさらにはっきりと、あの女性の姿が浮かび上がってきた。彼女は手を伸ばし、かすれた声で何かを伝えようとしている。
「……助けて……」
その瞬間、僕は跳び起きた。時計を見ると真夜中だった。
ベッドから出て、棚の方を見た瞬間――。
写真立ては再び倒れていた。しかも、写真立ての中の女性が微笑んでいるように見えた。
僕は恐怖に駆られ、写真立てを二度と立て直すことはなかった。
それ以来、写真立てが倒れることはなくなったが――夢の中の彼女の姿は、今も消えない。
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