目次
写真立ての異変
数年前に亡くなったおばあちゃんは、彼女にとって特別な存在だった。幼い頃からおばあちゃんに育てられ、優しい笑顔や、そっと頭を撫でてくれる手の温もりが心に深く残っている。
亡くなった後も、おばあちゃんとの写真を小さな写真立てに入れて、部屋の棚に飾っていた。白髪の可愛らしいおばあちゃんと一緒に笑顔で写るその写真は、見ていると不思議と安心できるような気がした。
ところが、最近になって、その写真立てがよく倒れるようになった。置く位置も変わっていないし、周囲に他のものがぶつかったりすることもない。それでも、気づくと倒れている。
「おばあちゃんが何か言ってるのかな……」
そう思って、写真立てを直してはまた倒れるという日々が続いた。
アルバムの発見
その写真立ての不思議な出来事が続く中、ふとおばあちゃんとの思い出が蘇ってきた。おばあちゃんと撮った写真をまとめたアルバムを久しぶりに見たくなり、棚から引っ張り出してきた。
ページをめくるたびに、おばあちゃんとの楽しい思い出が次々に蘇ってくる。お祭りのときの写真、庭でお茶を飲んでいる写真、そしておばあちゃんが作ってくれた料理の写真――。そのどれもが、おばあちゃんの温かさに溢れていた。
何気なくページをめくり続けると――一枚のメモがアルバムの隅からひょっこりと現れた。
「……これ、何だろう?」
古い紙に、見覚えのある筆跡。おばあちゃんの字だった。震える手でそのメモを取り出し、そっと広げると、そこにはおばあちゃんらしい、温かい言葉が綴られていた。
「大切なものは見えるところにしまってね。
忘れないように、いつもそばに置いておくんだよ。」
メッセージの意味
そのメモを読んだ瞬間、心の奥からじんわりと温かな感覚が広がった。おばあちゃんが、あの日々と同じように心配してくれているように思えたのだ。
「大切なものは見えるところに……」
もしかして、おばあちゃんの写真立てが倒れ続けていたのは、おばあちゃんが何か伝えたかったからなのかもしれない。見えるところにいつも置いてほしい、と。
そこで彼は、おばあちゃんの写真立てをより目立つ場所に移動し、しっかりと固定してみることにした。棚の一番目立つ位置に置き、おばあちゃんに毎日「おはよう」と「おやすみ」を言えるように――。
その後、不思議と写真立てが倒れることは二度となくなった。
毎日の日課
それ以来、彼は毎朝、写真のおばあちゃんに「おはよう」と声をかけるようになった。そして、写真を見ながら、少しだけ会話するような気持ちで、一日を始めるようになった。
彼は心の中でそっと言う。
「おばあちゃん、ちゃんと見えるところに置いてあるからね。」
そして写真のおばあちゃんは、変わらぬ優しい笑顔でそこにいてくれる。
写真立てが倒れていたのは、ただの偶然だったのかもしれない――それでも彼には、おばあちゃんが教えてくれたように感じられた。
大切な人との思い出は、目に見える場所に置いて、いつでも心の中で話しかけることができるように。
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